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海の未来、温暖化と酸性化 生態系の大転換に警鐘

2020.5.19 0:00 京極恒太

 人間社会が吐き出す二酸化炭素(CO2)が増え続ければ、地球は温暖化し、海水温も上がる。その上、海に溶け込むCO2が増え、海水の酸性化が進む。すると海藻やサンゴ、魚や貝などはどんな影響を受けるのか。

 3月末、伊豆・下田と伊豆諸島の式根島で筑波大下田臨海実験センターのアゴスティーニ・シルバン助教(38)ら研究班に同行、海に潜った。

 2015年以来の調査で、温暖化と酸性化が同時に進めば、さまざまな生物のすみかが消え、限られた種しかいない海になることが分かってきた。

 現場は水温とCo2濃度の違う三つの海域。下田を「現在」とし、黒潮の影響などで年間平均水温が19度と下田より約1度高い式根島の2カ所で「未来」を検証する。「温暖化」だけの影響を見る海域のそばに「温暖化と酸性化」双方の影響が予測できる海がある。火山ガスが海底から湧く御釜湾の「CO2シープ」だ。

 下田南東約45キロの式根島に調査船で到着、まずシープに潜った。水温18・5度と暖かい。同じ日「現在」の下田は15・5度。海水のCO2濃度は削減が進まない場合の2100年ごろの千PPm前後。400PPmの「現在」より、海洋酸性化が進行した状態となっている。

 水深9メートル、高さ約10センチの薄緑の海藻ばかりが岩肌を覆い、一面単色の世界だ。酸性化を嫌うウニの姿はなく、魚も少ない。酸性化した海水に長く漬かると、石灰質を持つ生物に影響が出る。ホラガイなどの貝殻は溶け、骨格の硬いサンゴは成長できない。水中で見た巻き貝は先が白く、石灰藻の付着物がなく、つるつるだった。

 わずか数百メートル離れた「温暖化」の海は別世界。緑や灰色、淡いピンク、色鮮やかなテーブルサンゴの上を青や黄色の熱帯魚が泳ぎ、南国のよう。巻き貝の殻は赤い石灰藻が付き、多様な生物が共存していることが分かる。だが近年、高い水温などの影響で海藻が消失。ブダイなど海藻を食べる生物が活発になったせいもあるという。

 「現在」の海はどうか。下田・鍋田湾は海藻のカジメの森が広がり、イセエビが隠れていた。「こんな光景、伊豆の他の海ではもう見られない」と助教は嘆く。式根ほどではないが、暖かくなった海で海藻がなくなる現象が広がっている。

 「水温上昇に伴い、サンゴが北上し、温帯の海が熱帯化しているが、酸性化はそれを止めてしまう。生態系が変わる取り返しの付かない転換点が迫っている」と助教は警鐘を鳴らした。(写真と文、共同通信・京極恒太、鷺沢伊織)

※写真・記事の内容は、2020年4月15日までの取材を基にしたものです

海の酸性化CO2 世界気象機関によれば大気中の二酸化炭素(CO2)濃度(2018年)は407PPmで産業革命前の278PPmの約1・5倍となった。海は大気のCO2の約2~3割を取り込むとされるが、酸性化すると吸収しきれないCO2が大気に戻され、温暖化が進む。通常の海水は弱アルカリ性で水素イオン濃度がpH8・1。7の中性に近づくほど酸性化する。式根島CO2シープは7・8。過去百数十年で0・1低下、今世紀末にはさらに0・3下がると予測される。