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「ピアノと海と車いす」第2話 水の中では自由に動ける 意思を伝えることが課題

2017.8.28 11:00 共同通信

 小脳性失調症と闘ってきた池田さんは40歳で本格的なダイビングに挑戦した。障害のある人も潜水を学べる埼玉県のダイビング店シーメイドに連絡。店主で障害者ダイビング指導団体HSA・JAPAN講師の太田樹男(おおた・みきお)さん(51)と出会った。

 夏の盛り、ライセンスを取るための実習が静岡県伊東市で行われた。水中では安全のため、池田さんの前後に介助のダイバーが付き添う。大きな課題は、一緒に潜る相手を信頼し、自分の調子や意思を正確に伝えられるかどうかだった。

 池田さんはこれまで「否定的な反応が怖くて顔色をうかがい、相手に合わせてしまう」性格だったと自己分析する。介護ヘルパーを含め、すべての人が怖くなり、感情を押し殺していた時期もあると打ち明けた。 「大丈夫?」と聞かれると反射的に「大丈夫」と答えてしまう癖がついてしまったという。

 しかし、潜水ではそれが通用しないと知った。言葉が通じない水中で自分の状態を適切に伝えることが命に関わる。不安や緊張が事故につながることも。何を問われても「大丈夫」では危険だ。

 「耳抜きできている?」「寒くない?」「息苦しくない?」。太田さんの目を見て黙って指やボディーサインだけでやりとりする訓練を重ねた。

 「焦らず今の気持ちをちゃんと伝えることは、日々の生き方につなげていけると感じました」

 潜水用プールで、顔全体を覆う水中マスクを装着した。太田さんが背負うタンクから空気が送られる仕組みだ。浮力調整できるジャケットを着て潜ると、足が使えなくても手の力だけで動くことができた。

 水深5メートルから無事浮上すると指でOKマーク。「水中では自由に動ける、行きたいところへどこへでも進んで行ける」と興奮した。自分の足で歩き、走った頃の感覚がよみがえった。

*写真・記事の内容は、2017年8月28日までの取材を基にしたものです