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「ピアノと海と車いす」第1話 絶望の末、生きる決意 20代で小脳性失調を発症

2017.8.28 10:00 共同通信

 この夏、車いす生活を送るピアニストの女性が、伊豆でダイビングに挑んだ。20代で病のため運動機能を損ない、リハビリとピアノ演奏を懸命に続けながら、海の世界に憧れた。一度は自殺まで考え、絶望していた彼女が夢を追い、自分を取り戻していく姿を追った。
  
 兵庫県尼崎市のピアノ講師、池田佳ず実(いけだ・かずみ)さん(40)は、小学校からピアノを続け、数々のコンクールに入賞、大阪芸術大に進んだが経済的な理由で退学。20歳でピアノ教室を始めた。

 24歳の夏、原因不明の症状に襲われ、ピアノを弾く指がうまく動かなくなった。体の重心を保つことができず、やがて歩くことも困難に。運動機能に障害が出る小脳性失調症と診断された。

 発症後、物がつかめないほど落ちた握力、ふらつく体の機能回復訓練に努めた。かつての音が出なくても毎日、鍵盤を必死でたたく。変わってしまった自分を受け入れるのに数年かかった。

 28歳の頃、自暴自棄になり、家中の物を壊し、わめき散らした。そして、とうとう首をつり意識を失った。気付いたら病院のベッドの上にいた。

 しかし、一緒に同じ大学を目指した大切な仲間たちから「友だちなんだから、勝手に死なないで」と怒られ、「一人じゃない。一度死ぬことにしたのだから怖いことは何もない」と再び生きる決意を固めた。

 退院後、友人に誘われた旅先で初めて体験ダイビングをした。「こんな世界があったのか。生きていて良かった」と衝撃を受けた。自由に泳ぐ魚に、「何を気張っているの。力を抜きなさい」と言われた気がしたという。その思い出が心に残り、以来、海の世界に憧れ続けた。毎週リハビリのため泳ぐプールでサンゴの海を思い浮かべた。

 その後、ピアノ教室を再開。今年6月には「私はもう大丈夫」と友人に伝えたくて東京で国際音楽コンクールに出場した。シューベルトの即興曲を弾き、奨励賞を受賞した。(共同通信・西沢幸恵、京極恒太)

*写真・記事の内容は、2017年8月28日までの取材を基にしたものです