メニュー 閉じる メニュー
写真

写真

磨いた聴覚でゴール狙う ブラインドサッカー

2020.1.22 12:02 共同通信

【カメラ目線】「パラアスリートの肖像」(3)

 「シャリン、シャリン」と鈴が鳴るボールを左右の足で小刻みに転がす。アイマスクを着けた選手が「ボイッ!(行く)」とスペイン語で叫び、激しく体を寄せる。

 ブラインドサッカー日本代表の川村怜(かわむら・りょう)さん(30)。5歳でぶどう膜炎を発症し、視力が次第に悪化。活発な少年は、目がほとんど見えなくなり、中学でサッカーを断念。大学に進学し、自分にできるスポーツを探していたとき、“もう一つのサッカー”と出会った。

 ガイドの指示やキーパーの掛け声で立ち位置を把握する。最初は恐怖で動けなかった。練習を重ねるうち、聴覚と触覚が少しずつ磨かれた。

 耳をそばだて感覚を研ぎ澄ますと、わずかな音や気配も感じた。風になびくユニホームや選手の呼吸音。スパイクシューズが削る芝生の感触や、サイドラインを囲む壁の圧迫感。コートには、多彩な音と物があふれる。「その中から瞬時に必要な情報を拾い、頭で描いたプレーができるか」が勝敗につながる。

 運動理論も追究した。音につられて身体の重心がどう動くのかを探った。その逆を攻める動作を徹底的に体に刻んだ。

 こうして養われた技術や空間を認知する能力は、日常生活にも生かされる。点字ブロックがない場所を堂々と歩き、背後から近づく自転車の気配を早くから察知する。

 1年後、東京を舞台とする戦いのイメージもできている。「世界の誰よりも、試合を支配したい」

 (共同=仙石高記、泊宗之)

*写真・記事の内容は2019年8月9日までの取材を基にしたものです。