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「残された体を生かす」 車いすアーチェリー

2020.1.22 12:00 共同通信

【カメラ目線】「パラアスリートの肖像」(1)

 弦の中央についたタブを右奥歯でしっかりとかみしめる。まひが残る左手で弓を握り、口で一気に弦を引き切ると数秒静止。ぱっと口を開くと、矢は50メートル先の的の中心をめがけ、勢いよく飛び出した。

 大山晃司(おおやま・こうじ)さん(27)は大学時代、体操部の練習中に頸椎(けいつい)を損傷し、首から下の筋肉が自由に動かなくなった。動きを一から思い出させる過酷なリハビリ生活の中で、元来スポーツ好きの体がうずく。できる競技を探し、たまたま車いすアーチェリーに出会った。自身と同じような障害のある人たちが、口や足で矢を放つ姿に目を奪われた。

 右腕の力が入らない大山さんが行き着いたのが口で射る方法。しかし弦を引くには最大約20キロの力が必要だ。最初は数メートル先の的を狙うのが精いっぱいだった。

 安定した射形を体に染みこませるため、仕事を終えてから毎日100本近く矢を射た。繰り返すうちに右あごと首回りの筋肉が発達。弱っていた体幹や左腕の三頭筋が鍛えられた。「事故で一度失った自分の体を、再び作り上げていった」

 ただ、口を用いた方法は体への負担が大きい。弦を放つ反動で脳が揺れ、激しい頭痛にも襲われる。同じ撃ち方の選手は昔に比べ減っている。

 それでも大山さんはこだわり続ける。「残された体の機能を生かし、矢を放つ姿を見てほしいから」

 (共同=仙石高記)

東京パラリンピック開幕まで約1年。誰よりも速く、誰よりも高く―。障害と向き合うアスリートたちは、ありのままの体を生かし、独自のこだわりを持って技を追求している。夢の舞台に向かって走る選手たちの一瞬をカメラに収めた。

*写真・記事の内容は2019年8月9日までの取材を基にしたものです。