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濁った海で生き抜く生命 東京・お台場で潜水調査

2017.12.24 11:57 共同通信

 高層ビルに囲まれた人工浜の前の茶色い海。濁った水中であちこちに小さな生命が息づく。  

 東京・お台場海浜公園で20年以上、観察を続ける民間の「東京港水中生物研究会(日本水中科学協会)」の潜水調査に真夏から晩秋にかけ、同行した。内湾を囲む石垣沿いの浅瀬が観察の場だ。一帯は2020年東京五輪のトライアスロン会場となる海である。

 都会が吐き出す排水で海水は富栄養化、プランクトンが増え、酸素を大量消費する。夏場は海面水温が上昇、海水が上下で混じらず海底近くは酸欠状態となる。その海で生き抜く生き物たち―。

 7月末、水温27度、透視度50㌢。死んだ二枚貝の山から体長約10㌢のマハゼが顔を出す。秋に成魚となる小魚たちだ。水深1~2㍍の浅場にいる。それより深いと息苦しいのだ。水深3~4㍍にはヘドロの海底が広がる。

 この日の測定では海水に溶け込む酸素量は水面で1㍑あたり約8㍉㌘、水深4㍍で約2㍉㌘。4㍉㌘以下で生物の生息に影響が出始めるという。

 研究会の須賀次郎代表(82)は「数年おきに深刻な貧酸素水塊が押し寄せ、ある生物がいなくなり、別な種がすみ着く交代劇を繰り返してきた」と語る。90年代に増殖した外来種ムラサキイガイが大きく減少し、マガキに覆われた斜面もある。

 9月初旬、水温24度。浜から約200㍍先、水深2㍍。古い木のくいが並ぶ根元にイシガニがいた。甲羅が付着物に覆われ、動かない。生死を確かめようと触れると、目玉をぎょろり。付近の溶存酸素量は、通常の半分ほどしかない。「瀕死(ひんし)の状態だったけれど、生きていたね」と研究会メンバーが声を弾ませた。

 10月末、台風が接近、冷たい雨が降る。水温は海面で17度、水深3㍍で約20度。暖かい海底は白い糸のような硫黄バクテリアの膜に覆われていた。その上に成長したハゼが潜んでいた。古いくいの根元に隠れたのは9月に見たイシガニか。藻などを食べる軟体動物トゲアメフラシも出てきた。

 水中の酸素量は水温が下がる秋から回復に向かう。過酷な環境だが、それでも生命を育む海が都心にある。(共同通信社写真部・お台場取材班 京極恒太、染谷宗秀、西沢幸恵)

貧酸素水塊 海水中の酸素がほとんどなく魚介類が生息できない水域。ヘドロや植物性プランクトンの死骸などの有機物がバクテリアに分解される時に酸素を消費するため発生する。夏場は水面近くの水は温められて軽く、水底付近の水は重いため上下の対流が起きず酸素の供給がなくなるので発生しやすい。

*写真・記事の内容は、2017年11月16日までの取材を基にしたものです。