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パラ水泳初舞台目指す42歳
失った体の機能取り戻す

「やった。目標の標準記録を切った」。11月、千葉で開かれたパラ競泳日本選手権―重度の下肢まひ障害のある<span class="keyword">池田</span>和美(42)(兵庫県尼崎市)は、女子100メートル平泳ぎで自己ベストを7秒縮め、2分39秒でメダルを手にした。レースの疲れで体の震えが止まらないまま、表彰係の女性に抱きついた。記録突破で、東京パラリンピック代表選考会を兼ねる大会の出場が見えた。競技を始め、わずか1年半だった。<br /> 来夏のパラ本大会に向け、さまざまな障害のある人たちが挑み続ける。<span class="keyword">池田</span>もその一人。日本代表となる基準の記録は1分56秒とさらに壁は高いが、ハイペースで自己記録を更新してきた。奇跡は起こるかもしれない。<br /> 20代前半で小脳性運動障害を発症。リハビリで水泳を始めた当初は、我流の犬かきで25メートル、2分以上かかった。2018年5月、周りの勧めで兵庫県大会に出場し、人生初の競泳で好成績を収めた。その後、指導を受け、毎日3~5キロの練習漬け。みるみるタイムが縮み、半年後の国体では大会記録を出した。<br /> もともと健常者をまねた泳ぎだったが、脚で水を蹴ることができず、進まない瞬間があった。コーチの教えで上半身だけを積極的に使う泳ぎに変えた。腕を真横に伸ばし、手のひらを返し、舟でオールをこぐように体の中心に戻す「スカーリング」をものにすると、驚異的に記録が伸びた。<br /> 「水泳は自分の力で進まないと前進しない」と改めて気付いた。自宅で意識して腕の筋肉を鍛えた。一人では上れなかった階段を、はい上がる訓練を重ねた。これまでプールのスタートは上半身を起こす姿勢が保てず、水面に浮いていた。今では介助者の支えでスタート台バーを握り、前向きに体を保つ練習もする。「失った体の機能を取り戻せる伸びしろがあった」と自ら驚く。<br /> 「無理という人はいるかもしれないが、パラリンピックに出たい」。来年3月の静岡での代表選考会を兼ねた春季記録会に向け泳ぎ始めた。(写真と文、共同通信写真映像記者・京極恒太、西沢幸恵)写真・記事の内容は、2019年12月14日までの取材に基づくものです。池田さんはピアニスト・池田佳ず実としても活躍しています。

共同通信