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【コロナで変わる日常】(11) 諦めないよ
東京・柴又のラムネ工場

初夏を迎えても小さな町工場は静まりかえっていた。ラムネの瓶がぶつかり合う音もシロップの甘い香りもない。夏の風物詩のラムネを約60年にわたり製造販売してきた大越飲料商会(東京都葛飾区)が苦境に立たされている。緊急事態宣言で卸先の飲食店が営業自粛した影響が依然尾を引いているためだ。4月ごろから工場は開店休業状態となり、出荷されずに残った瓶ケースはうずたかく積まれたまま。売り上げは例年の2割にも満たない。大越恒男(おおこし・つねお)社長(84)は「こんなこと初めて。どうしようもない」と唇をかむ。需要を当て込む夏祭りや花火大会などの開催は不透明。飲食店の客足が回復する時期も見通せない。東日本大震災時よりはるかに厳しい状況だ。一方で励ましや事業継続を願う声が相次いだ。すでに生産終了した総ガラス製の瓶を使い続けるのは都内で大越さんだけ。近くの茶屋店員は「ビー玉の響きなどプラスチックにはない風情がある。ずっと残してほしい」と話す。「飲む人に喜んでもらいたい」との一心でやってきた。時には祭りの出店で客と触れ合い、直接感想を聞くことも。そんなささやかな楽しみもコロナ禍でかないそうにない。人もまばらな柴又の街角を見るともどかしさが募った。「今はじっと耐えるしかない。でも諦めないよ」。ラムネを待っていてくれる人がいる。だから踏ん張り続ける。(共同=大里直也)*写真・記事の内容は2020年6月5日までの取材を基にしたものです。

共同通信