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真珠の輝きに希望を託し 二重苦と向き合う産地

2021.2.21 15:23 共同通信

 島々が連なる穏やかな海にいかだが並ぶ。潜ると真珠をつくり出すアコヤガイの入ったかごがいくつも現れた。全国有数の養殖真珠の産地、三重県志摩市の英虞湾。貝の大量死と新型コロナウイルスに悩まされながらも、地道に作業を続ける養殖業者の姿を追った。

 殻を少し開き、器具を使って真珠の元となる丸い「核」を挿入していく。35年以上養殖業に携わる三代目の竹内章浩(たけうち・あきひろ)さん(55)が作業場で真剣な表情を見せていた。真珠の出来を左右し熟練の技術を要する作業は外科医の手術のようだ。

 だが、こうした核入れできる大きさに育つ以前の稚貝を中心にアコヤガイの大量死が2019年から続出。愛媛県や長崎県でも判明し、原因特定には至っていないものの三重県の調査では海水温の上昇や餌となる植物プランクトンの減少などの影響が指摘された。

 そのさなかにコロナの感染が全国で拡大。海外の真珠の仲買人が入国できず、収入に直結する入札会は延期になった。今後の真珠価格への影響も見通せない状態だ。

 リーマン・ショックの際は真珠価格が暴落し、有望な若手が次々に離職していった。「もう仲間が辞めていくのは見たくない」。業者らは日々海水温をチェックし、貝の状態などについての情報共有を密にしている。

 小さな貝から数年かけて生み出される真珠。人々を魅了するその裏には今、苦境と向き合う産地の姿がある。「真珠養殖の灯を消さないよう皆で何とか乗り越えたい」と話す竹内さん。困難の中でも仲間と一粒の輝きに希望を託している。(写真と文 鷺沢伊織・共同通信写真映像記者)

*写真・記事の内容は2021年1月23日までの取材を基にしたものです。