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【コロナで変わる日常】(35)ため息に耳傾けながら 大阪・夜の街を流す運転手

2020.10.25 7:05 共同通信

 ネオンの光り輝く街をタクシーが進む。週末の午前0時を過ぎた大阪の繁華街・ミナミ。「先週より、ちょっとましやな」。この街を拠点に33年間走ってきた三谷篤(みたに・あつし)さん(69)がぽつり。人は戻りつつあるが、かつてのにぎわいにはほど遠い。

 三谷さんの耳には夜の街で働く人々の苦しそうな声がこびりついている。「今日もお客がゼロや」―スナックのママ。「働いても給料がない。閉めたほうがましや」―飲食店経営の男性。「(コロナ禍が)早よ終わらな、しんどい」―自営業の男性。不安や悩みを聞くうちに、客の境遇は自身と重なり、心が痛んだ。

 新型コロナ感染が広がり始めた3月半ばから売り上げは激減。一時は、通常の3割まで落ち込んだ。訪問ヘルパーのスタッフとして働く妻の給料と年金を合わせても生活はままならない。無利子で資金繰りができる特例の民間貸付制度を利用してしのぐが、返済できるのか心配がつきまとう。

 気がめいる日々の中でうれしいこともあった。「一緒に頑張ろうや」。商売は苦しいはずの客の一言に心が奮い立った。

 「今は我慢して乗り切らな」と三谷さんは、ハンドルを握る。運転席と後部座席が透明なシートで隔てられた車内で、今日も街の声に耳を傾ける。「分かる。一緒やでと、寄り添う気持ちがお客さんに伝われば、それでいい」。

(共同=遠藤弘太)

*写真・記事の内容は2020年9月18日までの取材を基にしたものです。