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【コロナで変わる日常】(33)無料のかけうどん 大阪で困窮者向けに提供

2020.10.25 7:03 共同通信

 厚い油揚げの浮いた濃い味のつゆをすすると、ゆずの香りがふわり。日雇い労働者の街として知られる大阪市西成区あいりん地区のうどん店「淡路屋」は、新型コロナの影響で困窮した人たちに、無料でかけうどんを提供している。

 3月、感染拡大による大阪府の外出自粛要請を受け、客足が遠のいた。余った食材を前に、店主の大前孝志(おおまえ・たかし)さん(45)は考えた。「困っている人にただで食べてもらおう」。当時、建設現場などの日雇い仕事は激減、所持金が底を突く人もいた。

 食べたい時に食べられないつらさは、身をもって知っている。20代後半から6年間、刑務所で暮らした。焼き肉屋をはしごするような大食漢だったが、服役中の食事はカロリーが制限され、午後5時の夕食以降、翌朝まで食べられない。食べ物の写真を眺めて空腹を紛らわせる毎日だった。40歳を過ぎた頃には、滞在先のアジアで無一文になり、一時路上生活に。現地の人に山盛りの食事を差し出された。

 3年前にあいりん地区で店を開き、「今度は俺が助ける番や」と心に決めた。「現在食事に本当に困っておられる方、どなた様に限らず、かけうどん一杯無料―」。店先に置かれた手書きの看板を見て、多い日には5人ほどが空の財布を手にのれんをくぐる。
 常連客が戻り始めたが、店の売り上げは2千円に満たない日も。それでも「必要としてくれる人のために、無料提供はやめへん」。

(共同=武隈周防)

*写真・記事の内容は2020年9月18日までの取材を基にしたものです。