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扉を開けて ルポ ひきこもり

仕事や学校に行かず、社会とのつながりを持たない「ひきこもり」。長期化 高年齢化が進む中、新たな生き方の模索や支援の現場をルポする。

続編「波紋」(2)  「なぜ子に手を」憤る親  孤立に姿重ね合わせ

2019.8.5 18:24

 「ひきこもっていただけなのに、親が手を掛けるなんて。すごく腹が立つ。死んでしまった子は一体どうなるのか」。高校1年の時にいじめを機にひきこもり、40歳を過ぎた長男を持つ60代後半の母親。その声は、戸惑いと憤りで震えていた。6月中旬、東京都葛飾区内の会議室に40代以上のひきこもりの子を持つ親5人が集まった。

 

中高年のひきこもりの子を持つ親の会。主催したトカネット代表理事の藤原宏美(右)は「家族が不安を吐き出し、話し合うことが大切だ」と話す=6月、東京都葛飾区
中高年のひきこもりの子を持つ親の会。主催したトカネット代表理事の藤原宏美(右)は「家族が不安を吐き出し、話し合うことが大切だ」と話す=6月、東京都葛飾区

 


 川崎市の児童ら殺傷と、東京都練馬区で元農林水産事務次官が長男を殺害したとされる事件を受け、当事者の訪問支援などを展開する一般社団法人トカネット(東京)が開いた。代表理事の藤原宏美は「家族が不安を吐き出し、話し合うことが大切だ」と話す。

 練馬の事件の新聞記事を持参した70代後半の父親は「ぎりぎりの状態だったんだろう」と、言葉を選びながら語った。殺された長男と同じ40代半ばの息子がいる。「いろんな人脈があり電話一本でつながれたはず。立場ゆえに隠してきたのか」「誰かに助けを求めていたら、事件は起きなかったのでは」「ただ誰しも外では言いにくいことがある」。元農水次官を自らに重ねる姿は、親たちの長年の孤立を物語る。

 藤原は「行政の支援がほとんどない中で、周囲の偏見もあり、親は問題を抱え込まざるを得ない状況」と説明する。

 「寝ているうちにおやじを殺せばよかった」「親が死んで生活に困ったら、自分も死ねばいい」。トカネットの支援を受けながら“出口”を模索する親たちも、わが子が不意に放つ言葉に心がかき乱されそうになることもある。

 なるべく刺激しないようにするため、どの親も一連の事件について子どもと話したことはない。

 「どう思うか、なんて聞いたら、ひきこもりの事件だと言うようなものじゃないか」

 「テレビのニュースが息子に聞こえていたかもしれない。チャンネルを変えると不自然に思われる。やり過ごすしかなかった」

 トカネットは以前から家族の会を開いていたが、親が80代、子が50代で困窮する「8050問題」が顕在化し、今年から中高年の子を持つ親向けの会も別途開催している。事件を受け「状況を改善したい」と焦りを募らせる親が増えている。

 親亡き後、子はどう生きていくのか。近くのアパートにひきこもる長男に月々8万円を渡している60代の母親が胸中を明かす。「行く末を考えると、自分を保てなくなる。ただ一日一日が過ぎればいい」(敬称略)

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