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将来世代へのつけ回しだ 連続識者対論「争点を問う」(1)消費増税とアベノミクス

慶応大教授 土居丈朗

 安倍晋三首相は9月25日の記者会見で、解散の大義として予定通りの消費増税とその使途変更を掲げた。自民党と公明党が消費増税を掲げ、野党は増税に反対する形で、争点が鮮明となった。

 2019年10月に予定通り消費税率を10%に引き上げる際、その増収分のうち、借金返済に充てる財源の一部を、子育て支援や介護人材の確保に振り向けるため、20年度の財政健全化目標の達成は困難となる。この点は、わが国の財政再建を遅らせ、将来世代に負担をつけ回す意味で問題だ。基礎的財政収支黒字化という指標で、できるだけ先送りせずに、目標達成の道筋を立てるべきである。

 消費税率を上げれば、上げない場合より社会保障財源は確保できる。第2次安倍内閣で、5%から8%に引き上げた際も、消費税収は大きく増えた。増税しても税収が減ることはあり得ない。

 失業率がバブル期並みに下がっている状況で、消費税率を上げられないなら、半永久的に上げられない。高齢世代も負担する消費税を増税できなければ、社会保障の受益と負担にまつわる世代間格差は縮められず、若年世代の社会保障制度への不信を解消できない。若年世代の負担で賄われる社会保障財源を安定的に確保するためにも、若年世代の不信の解消は不可欠だ。消費増税に反対するなら、どの財源で巨額の社会保障給付を賄うかを、収支尻を合わせて示すべきだ。

 世代間格差を是正する観点からも、財政再建は重要だ。アベノミクス第1の矢で、デフレ脱却のために金融政策で異次元緩和を取っているから、国債金利がほぼゼロになっている。国債金利がほぼゼロだから財政再建は急がなくてよいというのは間違いだ。

 デフレが止まれば、物価上昇率はプラスに定着し、国債金利は数%に上がる。そのときに、国債残高が多ければ多いほど利払い費がかさみ、そのせいで社会保障費や公共サービスを大幅削減せざるを得なくなる。だから、早期に財政収支を改善することで、それを未然に防ぐことができる。

 経済成長しさえすれば、財政再建は何とかなるのだろうか。アベノミクスでも成長なくして財政再建なしと言ってきた。しかし、希望の党が批判するように、最近の成長戦略は停滞気味である。国の政策手段で経済成長をどれほど促せるのか。政治家は自らが動かせる政策手段でどうするかをきちんと語るべきだ。運任せのように、経済成長しさえすれば何とかなるというだけでは無責任のそしりを免れられない。

  (2017年10月11日配信)

土居丈朗

名前 :土居丈朗

肩書き:慶応大教授

プロフィール: どい・たけろう 1970年奈良市生まれ。東京大経済学研究科博士。専攻は財政・税制、地方財政。慶応大助教授などを経て現職。

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