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核心評論「辺野古埋め立て」 まやかしが支える工事  欠陥露呈、直ちに中止を 

共同通信科学部次長 樋口明

 沖縄県名護市辺野古の米軍基地建設ほど「まやかし」に支えられた事業も珍しい。環境対策、土砂投入など政府の対応は疑問だらけだ。さらに防衛省は埋め立て海域東側にある軟弱地盤の改良工事のため、設計変更を県に申請、計画のずさんさが露呈した。直ちに工事をやめるべきだ。

 防衛省沖縄防衛局の埋め立て申請は2013年。事前の地質調査で強度に問題のある地盤は見つからなかったと説明し、承認を得た。ところがその前提を5年もたってからひっくり返す。軟弱な地質がその後の調査で見つかったとしたのだ。

 地盤は逃げも隠れもしないのに、事前調査で一体何を見ていたのか。申請書は粗悪品だったとはっきりした。しかも工期は延び、総工費は当初計画額の約2・7倍となる。

 実は軟弱地盤は政府が認める前に指摘されていた。市民団体のメンバーが防衛局の地質調査結果から明らかにした。工事中断の求めに政府は「地盤の強度は確認中」として取り合わず、その間に土砂投入を始める。問題を認めて移設取りやめの声が強まる前に、既成事実化する狙いが透けた。

 環境保全策も疑問が尽きない。例えばジュゴン。辺野古周辺に生息したり姿を見せたりしていた2頭が、海底掘削調査や土砂投入の頃から姿を消した。ジュゴンは音に敏感で、環境団体は工事が影響したと指摘するが防衛局は否定してきた。

 そうした中、近くで今年2月に鳴き声が捉えられる。いずれも工事が休みの3日間だったため、騒音や作業船の往来がジュゴンを遠ざけたとの見方に説得力が増す。

 防衛局は対応策を打ち出したが、ここでも内容は見事に的を外している。工事の影響の有無を調べるために作業を止めてジュゴンが戻るかどうかをみるのではなく、作業中にジュゴンが近づくのを見張る監視船などを増やすというのだ。

 報告を受けた環境対策の有識者委員会も追認したから驚きだ。委員会は非公開で議事録の発言者は匿名。市民が疑問点をただす場もない。議論の結果は「専門家のお墨付き」となり工事の推進を支える。

 過去に日本生態学会など19学会が埋め立て申請に先立つ環境影響評価が不十分だとして、再評価を求めたことがあるが、全く顧みられなかった。都合よく専門家の意見を取捨選択しないと成り立たないところに、この事業の本質がある。

 政府が軟弱地盤を踏まえた設計変更を、新型コロナウイルス禍の中で沖縄県に提出したことも見過ごせない。全国で命と生活基盤を守るのに力を注ぐ時に、約2200ページにもなる申請書類の検討作業を課したのだ。それも知事が緊急事態を宣言した翌日である。「沖縄の方々の気持ちに寄り添う」(安倍晋三首相)という言葉の空虚さに今更驚かないが、こうしたやり口を許してはいけない。

 辺野古移設の理由である米軍普天間飛行場の早期返還自体が既に破綻している。工事をやめ、国外移設を本気で米国と交渉する以外、まやかしを解消する道はない。

 (2020年5月1日配信)

名前 :樋口明

肩書き:共同通信科学部次長

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