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新型コロナ:「共通の盲点」を減らそう  多国間の枠組みが重要

世界経済フォーラム(WEF)総裁 ボルゲ・ブレンデ

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を正確に予測することはできなかったとしても、世界経済崩壊の可能性をはらむパンデミックのリスクが拡大していることは以前から知られていた。それでもこの危機が突如起こったように感じられるのはなぜだろう。

 人間は、自分がリスクにさらされたり、メディアで報じられたりした時に、それを差し迫った脅威だと感じることが多く、目の前にないリスクを見過ごしがちだ。

 例えば、世界経済フォーラムが毎年、年次総会(ダボス会議)に向けて有識者らの回答を基にまとめる「グローバルリスク報告書」で、過去10年で感染症がリスクのトップ5の中に入ったのは、エボラ出血熱の拡大が問題となった直後の2015年に、2位にランクされたことがあるだけだ。

 最も身近なものを最大の脅威と感じるのは人間のさがだが、見逃していたリスクが現実の脅威となった時には準備不足のままでの闘いを強いられることになる。

 このようなものに対して何をするべきだろうか。まず、多くの人が見逃す「共通の盲点」に気づかなければならない。近年、多くの国で気候変動に関する懸念が高まっているのは当然だが、他のリスクも忘れてはならない。同様に、新型コロナウイルスのパンデミックに世界の目が向かっている今でも、国際社会が気候変動に対する一層の行動を取ることや、サイバーセキュリティー、国際安全保障関連の課題に対する解決策を求める闘いをやめてしまうことがあってはならない。

 既に、パンデミックの中で、日本で開かれる予定だったワールド・オーシャン・サミットなど重要な気候関連の会合が中止となり、生物多様性条約の締約国会議も延期を余儀なくされている。

 パンデミックに対応する必要がある一方で、気候変動問題に対する行動への熱意を高めるために国際社会が連携するという重要な取り組みを忘れてしまわないこともまた重要だ。

 同時にわれわれは「共通の盲点」を減らしてゆく方法を探す必要がある。それには、各国政府、企業、そして国際機関が一つになって力を合わせる、多くの利害関係者を巻き込んだ地球規模の枠組みが重要となる。多くの利害関係者の参加によって、多様な視点がもたらされ、社会全体に分散するいろいろなツールを活用しやすくなる。

 地理的にも業種的にも幅広い利害関係者が継続的な対話を続けることで、見落とされがちなリスクでも「共通の盲点」とならずにすむ可能性が高くなる。

 もちろん私たちを取り巻くすべてのリスクを予測し、常に警戒することは不可能なので、リスクが現実となった場合に対応できるような備えも必要だ。

 ここでも重要なのは、多様な利害関係者の枠組みだ。新型コロナウイルスのパンデミックによる今後の経済的、政治的、社会的影響に備え、強靱(きょうじん)な地球社会をつくるためには、国際機関や地球規模の取り組みを通じ、多数の利害関係者を巻き込んだ強力なアプローチが重要だ。それが現在目の前にあるわけではないリスクに対する備えとなる。

 (2020年4月9日配信)

ボルゲ・ブレンデ

名前 :ボルゲ・ブレンデ

肩書き:世界経済フォーラム(WEF)総裁

プロフィール:BORGE BRENDE 1965年ノルウェー生まれ。同国の国会議員、環境相、外相などを経て2017年10月から現職。

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