メニュー 閉じる メニュー
全国

全国

47オピニオン

各テーマの専門家に原稿を依頼したり、取材してまとめたりした「識者評論」「視標」、編集委員や論説委員、専門記者らが執筆した「核心評論」を随時アップ。

「新型コロナ」自然破壊し増えた人類  病原体の格好の標的

米グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション・主任自然保護オフィサー ラッセル・ミッターマイヤー

 新型コロナウイルスの世界的なまん延を目にして頭に浮かぶことは、われわれ人類が、この地球上で種として大きな成功を収め、たった1種の生物として、極めて多くの個体数を誇るようになったという事実だ。

 かつて米国西部にいたバイソン、アフリカのヌー、極北の地を埋め尽くす海鳥の群れなど、個体数が極めて多い生物種が集団で生活する例は少なくない。だが同時に、ある種が大量に増えることは、それを食べる捕食者や寄生する細菌、寄生虫、ウイルスなどにとっても非常に好都合だということになる。

 かつて人間を捕食していたトラやライオン、ワニなどは今や、人間の生存にとっての脅威ではなく、新たな捕食者が生まれる懸念もないが、人間の寄生虫や病原体は別だ。彼らは、いとも簡単に自分たちの宿主を見つけられるようになり、自然を破壊して数を大幅に増やした人類にとっての強敵となりつつある。

 しかも人類は自分たちの数を増やすだけでなく、家畜の数も大幅に増やしてきた。家畜は今や哺乳類の生物重量の60%を占める。人類が36%で、野生の哺乳類は4%でしかない。

 多数の家畜は、それらを利用する病原体にとって好条件となった。鳥インフルエンザや口蹄疫(こうていえき)、アフリカ豚熱(ASF)などのまん延がそれを示している。その結果、感染症が人間にも拡大するリスクを増やす。

 今回の新型コロナウイルスのまん延も、このような視点から考えることが重要だ。

 では、われわれは今、何をするべきだろうか。まず第一に、地球上の豊かな生物多様性を守る必要がある。家畜と人間が大部分を占め、単純化した生態系の中では、病原体は標的を見つけやすくなる。多様性に富む生態系は、われわれの健康を守ってくれるのだ。

 第二に、自然破壊を防ぎ、陸上の野生生物を生息地から捕獲して食べ物や薬、ペットなどとして利用する行為をやめることだ。発展途上国を中心とする野生生物の消費が、病原体に人間が直接、接触する機会を増やし、本来なら自然の中に閉じ込められ、人間にはリスクとならなかったような病原体が人間に感染するようになる。新型コロナウイルスもこうして拡大したと考えられている。

 中国はウイルスのまん延を機に、陸上野生生物の取引を禁止、ベトナムも同調する姿勢だが、アフリカ諸国も同様の取り組みが必要だ。

 第三に、大量の肉の消費を減らし、植物ベースの食品への転換を図ることも求められる。

 新型コロナウイルスのまん延は、われわれへの警鐘である。マスクの配布や手洗いの徹底、検査の拡大といった当面の対策だけでなく、コロナ後の世界を展望する上で、病原体が将来、さらにたやすく宿主となるものを見つけることがないように、根本原因をなくす対策が求められる。

 良好な地球環境と、そこに暮らす人間の健康を守るためには、冷淡さと無自覚によって生態系を破壊する人々の行為を止めることが何よりも大切だ。

 (2020年4月23日配信)

ラッセル・ミッターマイヤー

名前 :ラッセル・ミッターマイヤー

肩書き:米グローバル・ワイルドライフ・コンサベーション・主任自然保護オフィサー

プロフィール:RUSSELL・MITTERMEIER 1949年米国生まれ。霊長類学の世界的権威。環境保護団体、コンサベーションインターナショナルの代表、国際自然保護連合(IUCN)副会長などを歴任し、2017年から現職。

最新記事