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各テーマの専門家に原稿を依頼したり、取材してまとめたりした「識者評論」「視標」、編集委員や論説委員、専門記者らが執筆した「核心評論」を随時アップ。

微妙な線引き「二重権威」  核心評論「上皇の在り方」

共同通信編集委員 大木賢一

 令和初となった1月2日の新年一般参賀に、上皇ご夫妻も元気な姿を見せられた。多くの国民が歓迎したほほえましい光景を前に、若干の不安が頭をよぎった。

 退位特例法制定の過程で懸念された上皇と天皇の「二重権威」を防ぐという観点からすると、上皇ご夫妻が、皇室の重要行事に天皇、皇后両陛下と共に出席することの根拠は何か、望ましい活動の在り方について、検討が必要だと思うからだ。

 ご夫妻の活動は未整理なままになっている。今後次々に生まれるかもしれない「未来の上皇」の前例になる可能性が高いだけに、宮内庁も今後、ご夫妻自身と相談しながら整理を進めたい考えだという。

 「退位後は一切のご公務から身を引かれる」。宮内庁はこれまでこうした説明を繰り返してきた。今回の一般参賀は、宮内庁側が要請し、ご夫妻が「快諾」(宮内庁幹部)したという。当日、ご夫妻は現役時代に比べれば明らかに遠慮がちに、小さく手を振っていた。

 だが、これは「身を引いた」はずの「公務」に当たらないのだろうか。宮殿を使い、天皇や皇族と共に7万人近い人々の祝賀に応じるのが公務ではないというのなら、説得力に欠ける気がする。

 宮内庁が2016年の上皇さまのビデオメッセージに合わせて公表した資料で、新年一般参賀ははっきり「公的行為」に分類されている。「公的だけれど公務ではない」では、何とも分かりづらい理屈だ。

 もともと「公務」や「務め」が何を指すのかはっきりしないことは宮内庁幹部も認めている。美術展や音楽会の鑑賞は、先ほどの資料によると公的行為ではない。

 だが、上皇ご夫妻の訪問を受ける名誉が「芸術の振興」という一種の公的性格を帯びることを考えれば、国民の目には、現役時代と何も変わらない「公務」に見えるかもしれない。

 線引きが微妙な中、宮内庁はなぜ参加を要請したのか、そしてご夫妻もなぜ応じたのか。宮内庁は「皇室の新年はじめの行事だから、一家おそろいで出ていただいた方がいい」と説明していた。しかし、二重権威を疑わせかねない行為については、より慎重な検討を重ねなければならないと思う。

 令和の始まりは、新しい天皇、皇后像の創造だけでなく、200年間例のなかった「上皇の在り方」を問う道のりでもある。その場その場の判断ではなく、望ましい活動の範囲について、根拠を明らかにしておく必要があるのではないだろうか。

(2020年2月10日配信)

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