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各テーマの専門家に原稿を依頼したり、取材してまとめたりした「識者評論」「視標」、編集委員や論説委員、専門記者らが執筆した「核心評論」を随時アップ。

判断は有罪か否かだけに  核心評論「裁判員制度10年」

共同通信編集委員 竹田昌弘

 裁判員制度が始まった2009年、裁判員裁判の87%は裁判員の選任手続き終了後、同じ日に初公判が開かれていた。翌10年も80%がそうだった(データは最高裁集計による、以下同じ)。最高裁刑事局の担当者(裁判官)は当時「裁判員が初公判に来ないと困るから」と説明した。裁判員を全く信用していなかったのだ。

 初公判が別の日でも裁判員は来ることが確認され、選任と初公判が同じ日は次第に少なくなり、18年は11%にすぎない。

 とはいえ、審理の途中で裁判員が来なくなると困る。裁判員裁判を多く経験している複数の弁護士によると「裁判員の負担」を理由に、証拠調べや証人尋問を少なくするよう求めたり、休憩も含めて分単位の審理予定を強制したりする裁判長が少なくない。被告のための刑事裁判なのに、裁判官は裁判員にばかり気を使い、被告がなおざりにされているという。

 一方、最高裁は感情的な量刑が多くならないよう、類似事件の判決を参考に犯罪行為に見合った刑を決める「行為責任」の徹底を求めてきた。しかし案の定、被害感情などを重視して求刑を上回る判決が12年は19件、13年も14件相次いだ。

 そこで最高裁が14年の判決で「裁判員裁判といえども、他の裁判の結果との公平性が保持された適正なものでなければならない」などと指摘すると、15年は求刑超えがゼロに。16~18年も1~4件にとどまっている。

 ただ量刑を巡る裁判員の説得に時間がかかるのか、平均時間が09年6時間37分、12年10時間20分だった法廷外での評議が年々長くなり、18年は12時間58分に上っている(被告が起訴内容を認め、刑を決めるだけの自白事件でも9時間44分)。法廷審理の平均時間は12年以降、9時間54分~10時間55分で推移しているので、第1回公判から判決までの平均実審理期間が12年の7・4日から18年は10・8日になったのは、主に評議時間が長くなったからだ。

 平均実審理期間は裁判員を務める期間に他ならず、平均10日という現実は、裁判員候補者のうち、辞退者と選任手続き欠席者が計78%(18年)に達する大きな要因とみられる。量刑の説得が辞退・欠席率のアップを招く悪循環に陥っている。

 裁判員制度は10年たったものの、元々は無作為に選ばれた有権者(陪審員)が有罪か否かを1件だけ判断する陪審制度(英国、米国、ロシアなど)と、主に一定の任期を務める有権者(参審員)が裁判官とともに有罪か否かに加え、有罪の場合の刑も決める参審制度(ドイツ、フランス、イタリアなど)を折衷したものだ。

 1件だけ判断する裁判員は、他の裁判との公平性検討などに時間がかかる量刑には関与せず、陪審員と同じように、有罪か否かだけを判断した方がいいのではないか。

 その場合、被告が無罪を主張する事件を担当することになるので、裁判員裁判の対象は、最高刑が死刑または無期懲役などの事件に限る必要はなく、全刑事事件に広げ、罪を認めた被告は裁判官裁判で量刑を決める。こうした抜本的改革がなければ、悪循環は続くだろう。(共同通信編集委員 竹田昌弘

 (2019年5月21日配信)

 

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