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代替策で打開の道探れ  視標「米軍基地の辺野古移設問題」

ジャーナリスト 目黒博

 2月の沖縄の県民投票で、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を巡り、反対の民意が示されたが、安倍晋三首相は移設推進の姿勢を変えていない。本土政府と沖縄県との溝は深まるばかりである。

 国がかたくなに辺野古にこだわり、沖縄の民意に反して工事を進める背景には、普天間飛行場の辺野古移設に関する協議が迷走した経緯がある。

 1990年代末以降、名護市の幹部や地元建設業界関係者らが、辺野古施設の軍民共用化や米軍使用期限の設定、埋め立ての拡大などを要求したために、政府と地元との交渉は膠着(こうちゃく)状態に陥った。

 第2次安倍政権が成立すると、政府は当時の仲井真弘多知事から、巨額の沖縄振興予算と引き換えに辺野古埋め立て承認を引き出した。知事に対する県民の怒りが沸騰し、反辺野古を公約した翁長雄志知事が誕生するが、政府は埋め立て承認の合法性を認めた最高裁判決を盾に、沖縄県や名護市と協議せず、辺野古移設工事へと突き進んだ。

 沖縄の民意をはねつけ、辺野古移設を強引に進めたことで、県民の間に安倍政権の沖縄に対する「上から目線」のイメージが定着した。一方、当時の翁長知事は、辺野古移設の不当性を訴える戦略を採った。

 政府に敢然と立ち向かう翁長知事の姿は、沖縄のみならず、本土の人々の間にも共感を呼び起こした。ただ、「辺野古以外に実現可能な選択肢がなければ普天間飛行場は固定化される」という政府が築いた「壁」を崩すことはできなかった。

 だが辺野古の埋め立て工事が進む中、強気な方針を貫いてきた安倍政権にも逆風が吹き始めている。沿岸北側の深い海底に新たな軟弱地盤が見つかり設計変更が必要となったのだ。

 この事態は、玉城デニー現知事にとって大きなチャンスになるかもしれない。代替案を検討するための時間的余裕が生まれるからだ。

 代替案としては例えば、米軍輸送機オスプレイとヘリの暫定的施設を既存の米軍基地内に建設し、普天間飛行場の海兵隊航空部隊を移駐させ、普天間返還を早期に実現する。同時に辺野古北側の工事は中止し、航空部隊の恒久的移駐先を政府と県が協議する、といった案が考えられる。

 在沖縄海兵隊の航空部隊移設は、米軍再編、日米同盟の在り方、東アジア情勢などに直結する安全保障上の重要な問題だ。本来、辺野古に代わる移設案については、国が模索すべきであり、県の責務を超えている。しかし国に新たな選択肢を考案する意思がなく、米政府もそれを是認している以上、沖縄県がイニシアチブを取る他はない。

 2015年度までは県庁内に、東アジアの安全保障情勢を分析し、一線級の専門家たちと意見交換をする「地域安全政策課」が設けられていた。玉城知事は早急に辺野古以外の案を提示するため、チームを再編成すべきだ。そして周到なリサーチを基に、日米の専門家の英知と協力を得る努力を重ねれば、打開の道は開けるのではないか。

 米国の識者の間にも、沖縄で反基地感情が強まることを憂う意見が増えつつある。日本政府にとっても沖縄との対立が延々と続くのは好ましくない。県と共に知恵を出し合って歩み寄る時期が来たのではないだろうか。

 (2019年3月20日配信)

めぐろ・ひろし

名前 :めぐろ・ひろし

プロフィール:1947年盛岡市生まれ。東大卒。米インディアナ大修士課程修了。NHK関連会社に在籍後、名古屋外大教授などを歴任。専門は沖縄研究。

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