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改めて国会で議論を  視標「秋篠宮さま大嘗祭発言」

九州大教授 南野森
 秋篠宮の誕生日会見での発言が議論をよんでいる。皇位継承にともなう大嘗祭(だいじょうさい)の費用を国費(宮廷費)から支出するという政府の決定に対し、秋篠宮は、「宗教行事と憲法との関係はどうなのか」という問題意識から、内廷会計(私的経費)で行うべきではないかとの考えを述べたのである。

 まず一般論として、政府の決定に対して賛否を表明することや、政府の方針に影響を及ぼすような発言をすることは、「国政に関する権能を有しない」(憲法4条)天皇には許されない。

 では皇族はどうか。この点、皇族についての規定が憲法には存在しないことから、政治的発言を禁じられているのは天皇だけであり、皇族の政治的発言は自由であるとする学説もある。

 しかし私は、皇族と一口で言ってもそこには皇位継承順位や性別・年齢などの点でさまざまな皇族が含まれるのであるから、天皇との距離に応じて政治的中立性を求められる度合いには差があると考えるべきであり、例えば皇太子のように皇位継承順位が1位である皇族には、ほとんど天皇と同様の政治的中立性が求められるべきだと思う。

 そうだとすると、来年に予定される皇位継承にともない、今から半年もたたぬうちに皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)となることが想定される秋篠宮が、今回、政府の決定した方針に疑念を表明したことは、憲法上問題があると言わねばならないようにも思われる。

 ただ私は、今回の秋篠宮の発言は、以下に述べるような理由で憲法上の問題はない、と評価できると考えている。

 最大の理由は、それがあくまでも大嘗祭についての意見表明であったということである。消費税増税や入管難民法改正への賛否ではなく、皇室の伝統行事である大嘗祭のあり方についての皇族の意見表明なのである。

 秋篠宮自身が会見のなかで明確に区別しているように、即位の礼は国事行為であるが大嘗祭は皇室行事なのであって、皇族の立場からすれば、いわば「身内」の行事、ということになる。

 自分(の家族)の内側に直接関わることについての意見表明は先に述べた一般論に対する例外として、許容されるのではないだろうか(したがって私は、天皇が自身の退位について意見を表明することも、例外的に許される場合があると考えている)。

 さらに、今回の発言内容は憲法学の主流的な見解や裁判所の判断に照らして、きわめてまっとうなものであったという点も指摘しておきたい。

 神道の施設を設置し、神道の儀式にのっとって行われる大嘗祭に国費を支出することは、憲法の政教分離原則に反する疑いがあるとの指摘は憲法学では以前からなされているし、最高裁も、平成の大嘗祭について、県知事らが参列したことは政教分離違反とは言えないと判断したものの、大嘗祭そのものの宗教性は認めている(なお、大嘗祭に国費が支出されたことについては、最高裁は判断していない)。

 来年の大嘗祭をめぐり憲法上の議論を十分にすることなく国費支出が決定されてしまったことについては、やはり問題があるのであって、改めて国会で議論することが必要ではないだろうか。
 
 (2017年12月4日配信)
みなみの・しげる

名前 :みなみの・しげる

プロフィール:京都市出身。1994年東大卒。九州大助教授などを経て2014年から教授(憲法)。元AKB48内山奈月さんへの講義録「憲法主義」が話題に。

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