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各テーマの専門家に原稿を依頼したり、取材してまとめたりした「識者評論」「視標」、編集委員や論説委員、専門記者らが執筆した「核心評論」を随時アップ。

災害対応の標準化急げ 視標「熊本地震1年」

東京大教授 目黒公郎

 熊本地震で政府は、被災地からの要請を待たずに救援物資や人員を送るプッシュ型支援を行った。一定の成果はあったが、物資のトレースが不十分で受け入れ側の負担が増した。地域別・物資別の生産可能性をあらかじめ知って手配すれば、もっと近場からの効率的な配送ができたはずだ。

 一方、自治体側の受け入れ態勢も不十分だった。1995年の阪神大震災以降、職員の被災地派遣には随分慣れてきた。しかし、支援者の活動スペースや活動内容を事前に吟味し計画しておく「受援力」が不足して、現場に混乱が生じた。

 これら熊本地震の教訓を、けた違いの未曽有の災害になるであろう首都直下地震や南海トラフ巨大地震の対応に生かすには、どうすればいいか。

 まず受援計画を作成すべきだ。その前段階として、災害対応業務と訓練の標準化が必要となる。約500項目ある業務の内容を明示した上で、国や自治体はそれぞれ誰が何をするのか決めて訓練しておく。そうすれば同じ基準と同じ考え方に基づいて行動できるので、支援、受援は格段にスムーズになるはずだ。

 ただ、市町村には十分な防災担当の職員がおらず、しかも通常3年程度で異動するため経験が蓄積されにくい。結果として、市町村の大規模災害対応は、いつも初めてとなる。

 この状況を改善するには、行政の仕事を見直す必要がある。救援物資の調達や輸送、避難所の運営など、行政の経験値や専門性が高いわけでない業務は、専門業者や専門性の高いボランティア組織(プロボノ)にアウトソーシングし、行政にしかできない仕事に集中すべきだ。

 また、市町村レベルでの災害対応経験の蓄積は難しい。数十の市町村を束ねた上で、職員の任期中に少なくとも数回の災害対応を経験する都道府県を単位に、できれば周辺の複数県で連携し、ノウハウを蓄積するシステムに移行すべきだろう。

 被害を減らす長期的な取り組みも重要だ。事前対策は、構造物の強化と土地利用制限という「被害抑止」、被害が及ぶ範囲を狭くし波及速度を遅らせる「被害軽減」、そして「災害の予測と早期警戒」の三つが柱となる。

 他方、国の財政状況を考えれば、行政による公助は目減りしていく。必然的に自助と共助、つまりは個人や企業が助け合うしかない。

 まずは、個別の建物の耐震性を高めるとともに、災害のリスクの高い地域から低い地域へ人口を誘導すべきである。

 津波や洪水の被害を受ける地域の土地利用を規制し、災害保険も建物や地域ごとの実際のリスクに応じた保険料を設定することで、耐震改修を促進し、引っ越しや建て替え、転職や定年をきっかけとした安全な地域への移住を促すべきだ。

 企業の危機管理である事業継続管理(BCM)の体制や、市町村の取り組みを評価してランキングすることも重要だ。防災格付けの普及によって大規模な災害に備えることが、企業や地域の価値を上げることだと認識されれば、準備を加速させることにつながる。

 (2017年04月13日配信)

目黒公郎

名前 :目黒公郎

肩書き:東京大教授

プロフィール: めぐろ・きみろう 1962年福島県生まれ。東京大大学院博士課程修了。日本地震工学会会長。専門は都市震災軽減工学、国際防災戦略。著書に「地域と都市の防災」(共著)など。

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