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現実直視し、大幅見直しを 核心評論「エネルギー基本計画」

共同通信編集委員 井田徹治
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 一体、いつまで現実から目を背け続け、市民の声に耳をふさぎ続けるのだろう。経済産業省が始めたエネルギー基本計画見直しの手法を見ていると、こんな疑問を抱かずにはいられない。

 現行の計画が閣議決定された2014年4月以降、世界のエネルギーや環境を巡る動きは大きく変化した。

 15年には、今世紀後半に実質的に温室効果ガスの排出量をゼロにすることを目標に掲げ、脱炭素社会への歩みを進めることを明確にしたパリ協定に各国が合意。「全ての人々に持続可能なエネルギーへのアクセスを確保する」ことを目標の一つとする持続可能な開発目標(SDGs)が採択された。

 多くの国が温室効果ガスの排出量が多い石炭火力発電の廃絶に動きだす一方、再生可能エネルギー拡大に力を入れ始めた。その結果、太陽光や風力のコストは大幅に低下した。

 逆にこの間、原子力の退潮はさらに鮮明になった。台湾や韓国が脱原発を打ち出す政治的決定を行い、日本が有力な原発輸出相手国としていたベトナムは、高コストを理由に計画を白紙に戻した。

 フランスのマクロン政権は「25年までに原子力発電比率を現在の70%程度から50%に減らす」という前政権時代のエネルギー転換法を支持し、再生可能エネルギーを大幅に増やす姿勢を鮮明にした。原発建設コストの高騰は、米国で東芝の原発子会社の巨額負債を招き、電力会社は建設中の2基の建設を断念した。

 日本のエネルギー政策も当然、これらの世界の流れから無縁ではいられないはずなのだが、経産省などの関係者が、この現実を直視しているとは思えない。

 現行の計画は、原子力を「運転コストが低廉でエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付け、石炭は「供給性や経済性に優れた重要な燃料として再評価されている」としている。

 どう考えても大幅な見直しが必要なのだが、世耕弘成経産相は早々に「骨格は変えない」と明言。30年度の原発の発電比率を20~22%、石炭は26%にするという、時代や世論の要請と、エネルギーを取り巻く現実に反した電源構成の目標も見直さない方針だ。高速増殖原型炉もんじゅの廃炉にもかかわらず、使用済み核燃料の再処理路線も継続する姿勢でいる。

 政策の過ちを認めることを避けたいがために、目の前の不都合な真実から目をそらすことはあまりにも無責任だし、それを黙認するのは政治家の怠慢だ。

 現実逃避を続け、基本計画の見直しを小手先の修正で終わらせることは、将来の政策転換のコストをより大きなものにする。「過ちては改むるにはばかることなかれ」である。

  (2017年8月24日配信)

名前 :井田徹治

肩書き:共同通信編集委員

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