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対米で慎重さ残す 視標「北朝鮮ミサイル発射」

南山大教授 平岩俊司
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 北朝鮮が北海道襟裳岬上空を通過させるコースで太平洋に「火星12」とみられる中距離弾道ミサイルを発射した。

 北朝鮮は8月9日に米領グアム近海への同型ミサイルの発射計画を「慎重に検討する」と公表していただけに、日米など関係国は意表を突かれる形となったが、グアム方向ではなく日本列島越しの太平洋に向け発射したという点に、北朝鮮なりの戦術がうかがえる。

 迎撃措置を含めた米国の厳しい対応が予想されるグアム方向への発射を避け、その前段として日本列島上空通過のコースを選んだ可能性があり、米国への姿勢にはまだ慎重さを残しているといえる。

 日米によるグアム方向への発射に備えた警戒網を外し、予測が不可能であることや奇襲能力を示す狙いもあっただろう。

 それこそが、反撃能力を最大限に担保することにもなる。北朝鮮が発信する声明や談話の表現は過激だが、弾道ミサイルはもともと抑止力として位置付けている。

 抑止の効果、つまり反撃能力を誇示するため、不意打ち的な発射が必要だったのだろう。

 同時に、米国との将来の対話に備え、交渉力をできるだけ強化しておくという判断も根底にはあるだろう。トランプ政権はここのところ、北朝鮮に対話のメッセージを出し始めてはいるが、対話を始めるハードルを若干下げつつあるだけで、非核化のための対話という立場は変えてはない。

 一方の北朝鮮は、自分たちだけの非核化を話し合うのではなく、米国との軍備管理のような交渉を思い描いているとみられる。従って現状では北朝鮮は「まだ自分たちの真意が伝わっていない」と考え、非核化のための対話という米国の姿勢を切り崩そうとするだろう。対話なのか対決なのかを米国に迫るにらみ合いはまだ続くことになる。

 懸念されるのは、トランプ政権は北朝鮮の核・ミサイル開発に対し、レッドライン(越えてはならない一線)がどこにあるのかを明確にしていないため、北朝鮮がそれを探る手だてとして選択する次の一手だ。

 グアム近海に向けた中距離弾道ミサイルの発射や、6回目となる核実験を強行する可能性も否定できなくなってきた。(談)

  (2017年8月29日配信)

平岩俊司

名前 :平岩俊司

肩書き:南山大教授

プロフィール: ひらいわ・しゅんじ 1960年生まれ。愛知県出身。慶応大大学院博士課程修了。在中国日本大使館専門調査員、関西学院大教授などを経て、今年4月から現職。

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