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死刑執行停止制度が必要  核心評論「オウム事件大量処刑」

共同通信編集委員 竹田昌弘
 欧州連合(EU)と加盟28カ国、非加盟のスイス、ノルウェー、アイスランドはオウム真理教の松本智津夫元死刑囚ら7人が処刑された7月6日と、林泰男元死刑囚ら元幹部6人の死刑が執行された同26日、ともに次の共同声明を発表した。

 「いかなる状況下での極刑の使用にも強く、また明白に反対し、その全世界での廃止を目指している。死刑は残虐で冷酷であり、犯罪抑止効果がない。さらに、どの司法制度でも避けられない、過誤は、極刑の場合は不可逆である」

 ドイツは単独で日本に「死刑制度を再考し、今後の執行を思いとどまってほしい」と求めた。

 日本の死刑は、まず天井からつるした太い縄の輪を死刑囚の首に巻き付ける。その状態で足元の踏み板を外し、宙づりにして自らの体重で首を絞め続けて絶命させる。

 2日間で13人もの生命をこうしたやり方で次々に奪ったのは、米国の死刑存置州での薬物投与による処刑などよりも「残虐で冷酷」と受け止められたかもしれない。

 犯罪抑止効果については、日弁連も米国の死刑廃止州と存置州の殺人事件発生率を比較。20年続けて存置州が高いことから、抑止力は証明されていないと指摘している。

 何より共同声明で「過誤」と表現されている冤罪(えんざい)や誤判による死刑は、取り返しがつかない。

 戦後の事件で死刑確定者が4人も再審で無罪となった。再審開始の決定が出て取り消された死刑確定者も2人いる。刑を執行された「飯塚事件」の久間三千年元死刑囚は無罪だとして、妻が再審請求を続けている。

 冤罪・誤判で処刑された場合、その遺族は殺人事件の被害者遺族が容疑者・被告に死刑を望むように、警察官や検察官、裁判官を死刑にしろと訴えるかもしれない。

 過誤が「どの司法制度でも避けられない」からこそ、再審があるのに、オウム事件では、元死刑囚13人のうち10人が再審請求中に処刑された。

 確かに、刑事訴訟法が定める理由もないのに再審を請求しさえすれば、死刑を執行されないのは制度としておかしい。

 一方、刑の執行に対しては、刑訴法に基づき、裁判所に異議を申し立てることができるが、死刑の執行は直前に通告されるため、本人はもとより弁護人らも異議申し立てが事実上できないのもおかしくないか。

 過誤を減らすには、本人や弁護人らの申し立てで裁判所が再審請求の内容を一定程度審査し、結論が出るまで執行を停止できる制度が必要だ。また松本元死刑囚を巡って問題となった、処刑の意味を理解できない心神喪失かどうかを調べる精神鑑定を弁護人らが請求できる制度もほしい。

 13人というオウム事件の大量執行を機に、欧州の意見にも耳を傾け、いったん立ち止まって死刑について考えてみてはどうだろうか。
 
(2018年08月04日配信)

 

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