禁止に実効性どこまで 視標「旧統一教会の被害者救済法施行」
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題を受けて、昨年12月に成立した被害者救済法が一部を除き、施行された。ただこれは「最初の一歩」に過ぎず、まだまだ課題が山積している。
まず寄付の勧誘に当たり、霊感を用いて不安をあおるなどして困惑させる六つの行為が禁止された。これらの多くは既に消費者契約法で不当な勧誘と例示され、契約は後から取り消すことができるという条文があるが、使われてこなかった。
旧統一教会などが禁止行為をしても、行政指導(勧告や命令など)が中心なので、どこまで実効性があるかは、実際のケースを見てみないと分からない。
行政指導してもらちが明かず、結局は被害者が民事訴訟で解決しろということであれば、これまでと変わらない。それでは解決できないから、今に至っている。
禁止行為とされず、配慮義務が課された三つの行為のうち、少なくとも自由意思の抑圧と法人名を隠した勧誘は禁止すべきだった。強迫観念を植え付けて自由意思を阻害する旧統一教会のマインドコントロールや、旧統一教会であることを明かしても離れないと確信するまで何年も正体を隠すやり方は極めて悪質だ。
また合同結婚式や研修会の際、信者が大挙して現金を韓国に持ち出す行為は野放しで、1万人が韓国へ行けば、100億円近くが同国へ運ばれると言われている。政府は外為法による規制を検討すべきだろう。
合同結婚式で韓国人と家庭を持った日本人妻に対し、帰国の希望を確認することも課題となっている。韓国にいる日本人妻とその子どもは合わせて1万人を超えているとみられ、これは外務省の頑張りにかかっている。
信者の2世、3世の貧困問題は、今回の救済法で養育費相当額の返還請求に道が開けたものの、子どもの貧困は親による経済的虐待であり、児童虐待防止法でも対応すべきだ。そうすれば、行政が信者である親とやりとりできるようになる。
旧統一教会のやり方をまねたオウム真理教や法の華三法行は、宗教法人の認証から10年前後でともに摘発されたので、2世の問題はほとんどないのに対し、旧統一教会は摘発されずに続いてきたため、深刻な問題となってしまった。
一方、宗教法人の認証が受けやすく、その解散命令の要件は厳しい宗教法人法にも大きな問題がある。認証されると、法人税の免税特権を得るのだから、文化庁だけの判断ではなく、国税庁の審査も受ける制度が必要ではないか。
旧統一教会を巡る問題では、宗教法人を少数の職員で担当してきた文化庁宗務課の限界が明らかとなり、関係省庁で対応している。より連携を深めてもらいたい。
フランスのカルト規制では「法外な金銭要求」「元の生活からの意図的な引き離し」「子どもの強制的な入信」「公権力への浸透の企て」などの指標に該当すると、行政の監視対象となる。こうした制度も参考にして、さらに旧統一教会対策を進めてほしい。(聞き手=共同通信編集委員・竹田昌弘)
(新聞用に2023年1月10日配信)