正確ながん情報を図書館に 5年で5百館、拡大目指す 啓発事業への展開も
2023年01月31日

健康な人が、がんの知識を学ぶ機会は限られている。いざ知ろうとしても書店やインターネットには玉石混交の情報があふれ、選び取るのは難しい。誤った情報に惑わされれば適切な治療を受けられない恐れもある。基本的ながん情報一式を図書館に贈る国立がん研究センターの活動が開始5年を迎え、寄贈先が500館を超えた。関係者は正確な情報を身近に届けようと、一層の拡充を目指している。
▽目にする機会を
がん情報を提供する試みとして、同センターはウェブサイト「がん情報サービス」を運営し、知名度も上がってきた。
情報を探し始めるのは自身や家族ががんの疑いがあるか、がんになったときだ。混乱した状態でたくさんの情報を得てもなかなか頭に入らない。インターネットを使わない人がいることも考慮すると、多くの人に届けるのは簡単ではない。そこで考えられたのが、図書館での公開だったという。
「ほとんどの市町村にあり、展示すれば『探さなくても目に入る』のがポイント。いざというとき『あそこにあったな』と思い出してもらえる」
図書館学の専門家の協力を得て、手始めに全国3地域の図書館で試行的に取り組み、それを基に2017年に始めたのが、名付けて「がん情報ギフトプロジェクト」だ。
▽そのまま展示可
ギフトの内容は充実している。個別のがん情報として「胃がん」「大腸がん」「肺がん」「乳がん」などの解説冊子。共通する情報として、いざというときの基礎知識を伝える「がんと診断されたあなたに知ってほしいこと」「家族ががんになったとき」、働く人向けの「がんと仕事のQ&A」などがそろう。
国の施策で各地に整備され、誰でも利用できる「がん相談支援センター」の紹介資料や、持ち帰り用のチラシやパンフレット、専用バインダー、収納してすぐに展示可能な専用棚などがセットだ。
これまで約450件、2千万円を超える寄付と財団等から寄せられた助成金を基に、離島などを含め全都道府県の577図書館に寄贈。冊子や資料は随時追加、更新している。市町村図書館で巡回展示するための貸し出し用セットも増やした。
▽新たな展開
和歌山県立図書館では以前からがん関係の図書コーナーを設け、約800冊の蔵書を収めていた。寄贈されたギフトを公開したところ、パンフレットなどは約2週間で底をついた。
松田公利資料課長によると、この5年間で県内の多くの図書館が同様のコーナーを設け「手に取る人、静かに読んでいる人が多い」との連絡に関心の高さを感じている。同館と県内の図書館では、地元医療機関と協力したがん患者のための公開講座や講演会、乳がん患者のミニサロンなどを展開している。
島根県西ノ島町は地元の病院、図書館と共同で、がん検診の受診を促す啓発動画を作成。役場と病院で脚本を作成し、町の自主放送で放映しているミニドラマの中で、がん情報ギフトが自治体の啓発資料とともに地元図書館にあることを紹介して閲覧を呼びかけた。
同町の保健師大庭茉奈さんは「日頃から正しい情報を伝えるようにしているが、今は健康な人にも普段から、自身で調べてもらうのも大切だと感じている」という。
寄贈先の図書館リスト、寄贈の申し込み、寄付手続きについては、がん情報サービスのウェブサイトからたどれる同プロジェクトのページで。(共同=由藤庸二郎)
▽目にする機会を
がん情報を提供する試みとして、同センターはウェブサイト「がん情報サービス」を運営し、知名度も上がってきた。

がん情報ギフト(右)の活用を呼びかける国立がん研究センターの八巻知香子・患者市民連携推進室長=東京都中央区
「ただ、それだけでは届かない人がいる」と同センターがん対策研究所の八巻知香子・患者市民連携推進室長は話す。
情報を探し始めるのは自身や家族ががんの疑いがあるか、がんになったときだ。混乱した状態でたくさんの情報を得てもなかなか頭に入らない。インターネットを使わない人がいることも考慮すると、多くの人に届けるのは簡単ではない。そこで考えられたのが、図書館での公開だったという。
「ほとんどの市町村にあり、展示すれば『探さなくても目に入る』のがポイント。いざというとき『あそこにあったな』と思い出してもらえる」
図書館学の専門家の協力を得て、手始めに全国3地域の図書館で試行的に取り組み、それを基に2017年に始めたのが、名付けて「がん情報ギフトプロジェクト」だ。
▽そのまま展示可
ギフトの内容は充実している。個別のがん情報として「胃がん」「大腸がん」「肺がん」「乳がん」などの解説冊子。共通する情報として、いざというときの基礎知識を伝える「がんと診断されたあなたに知ってほしいこと」「家族ががんになったとき」、働く人向けの「がんと仕事のQ&A」などがそろう。
国の施策で各地に整備され、誰でも利用できる「がん相談支援センター」の紹介資料や、持ち帰り用のチラシやパンフレット、専用バインダー、収納してすぐに展示可能な専用棚などがセットだ。
これまで約450件、2千万円を超える寄付と財団等から寄せられた助成金を基に、離島などを含め全都道府県の577図書館に寄贈。冊子や資料は随時追加、更新している。市町村図書館で巡回展示するための貸し出し用セットも増やした。
▽新たな展開

プロジェクトは、資料の展示、閲覧にとどまらない広がりを見せる。
和歌山県立図書館では以前からがん関係の図書コーナーを設け、約800冊の蔵書を収めていた。寄贈されたギフトを公開したところ、パンフレットなどは約2週間で底をついた。
松田公利資料課長によると、この5年間で県内の多くの図書館が同様のコーナーを設け「手に取る人、静かに読んでいる人が多い」との連絡に関心の高さを感じている。同館と県内の図書館では、地元医療機関と協力したがん患者のための公開講座や講演会、乳がん患者のミニサロンなどを展開している。
島根県西ノ島町は地元の病院、図書館と共同で、がん検診の受診を促す啓発動画を作成。役場と病院で脚本を作成し、町の自主放送で放映しているミニドラマの中で、がん情報ギフトが自治体の啓発資料とともに地元図書館にあることを紹介して閲覧を呼びかけた。
同町の保健師大庭茉奈さんは「日頃から正しい情報を伝えるようにしているが、今は健康な人にも普段から、自身で調べてもらうのも大切だと感じている」という。
寄贈先の図書館リスト、寄贈の申し込み、寄付手続きについては、がん情報サービスのウェブサイトからたどれる同プロジェクトのページで。(共同=由藤庸二郎)