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犬と暮らす高齢者は元気 東京の1万人を調査 ペットの健康効果

2022.6.30 0:00
 ペットとのふれ合いは心を豊かにしてくれる。では体の健康に及ぼす効果はどうだろうか。国立環境研究所と東京都健康長寿医療センター研究所のチームが1万人以上の高齢者を調べると、犬を飼っている人は飼ったことがない人に比べ、介護や死亡が発生するリスクが半減することが分かった。日々の散歩や他の飼い主との交流がプラスになっている可能性がある。ペットの健康効果が示された形だが、日本の住宅事情では飼うのが難しい側面も。チームの谷口優・国立環境研究所主任研究員は「高齢化社会に向けて人とペットのよりよい関係を探る必要がある」と話す。
犬と一緒に散歩する男性(谷口優さん提供)
犬と一緒に散歩する男性(谷口優さん提供)

 

 ▽動物の恩恵
 病気の子どもや体の不自由な人に動物がもたらす恩恵は多い。病院で活躍する「セラピードッグ」が一例。入院して不安や痛みを抱える患者や家族を癒やす。盲導犬や介助犬は周囲や社会とのコミュニケーションを円滑にする効果もある。
 カナダの病院は、救急外来で長く待たされる患者のいらだちを鎮めるためにセラピードッグを導入。約200人を対象に調べると、待つ間に犬と10分間ふれ合った人は、何もしなかった人と比べて痛みなどの症状も大きく軽減していた。
 ただこうした研究は病気の人が対象の場合がほとんど。谷口さんは「健康に問題のない一般住民を調べた研究は少ない。ペットが健常な高齢者に及ぼす影響を分析してみようと考えた」と話す。
 ▽世話と運動
 研究対象としたのは、2016年時点で介護認定を受けていない東京都大田区に住む65~84歳の男女約1万1000人。犬や猫などペットの飼育を含む生活環境や既往歴などの健康状態を調査し、18年にフォローアップした。さらに20年に公的データを用いて要介護や死亡の有無を追跡した。
 開始時に犬か猫を飼っていた人は全体の14%。過去に飼ったことがある人は30%で、全く飼ったことがない人は半数以上を占めた。
カナダの病院で患者を癒やすセラピードッグ(サスカチュワン大提供、ジェーン・スミスさん撮影)
カナダの病院で患者を癒やすセラピードッグ(サスカチュワン大提供、ジェーン・スミスさん撮影)

 


 犬や猫の飼育状況ごとに介護や死亡が発生するリスクを統計的に分析すると、犬を飼っている人は、飼ったことがない人に比べてリスクが0・54倍とほぼ半減していた。犬の飼育に加えて定期的な運動習慣がある人は0・44倍に下がり、犬の世話を含む日常的な身体活動により介護や死亡のリスクが大きく減少することが示された。
 一方、猫では飼っている人と飼っていない人の間で介護や死亡のリスクの差がみられなかった。愛猫家には残念な結果だが、ペットの種類によって必要とする世話の内容が違うことが関係しているのかもしれない。
 ▽課題
 犬の散歩中に出会った飼い主同士が親しくなり、公園などで会話が進んで社会的交流が促進されることもある。「飼い主の身体機能が維持向上することに加え、『犬友』によって互助関係が構築され、身の回りの困り事を支援し合うこともあるのではないか」と谷口さん。今後はペットの飼育が社会保障費に及ぼす影響を調べることにしている。
 新型コロナウイルス流行で外出を控える高齢者が増えたのが懸念材料。ペットはお年寄りの孤独を癒やすだけでなく健康維持にも役立ちそうだ。
 一方でペットを虐待したり捨てたりする飼い主が絶えないのも事実。多くの人の健康づくりに生かすには解決すべき社会課題は多い。谷口さんは「欧米のようにペットを受け入れるシェルターが日本にも定着してほしい。お年寄りも安心して飼育するために、高齢者施設や集合住宅でみんながペットを世話する仕組みを考えたい」と話す。(共同=吉村敬介)

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