×
メニュー 閉じる メニュー
全国

全国

胃がん死亡、顕著に減少 ピロリ除菌の13年以降 医療費3800億円削減

2022.5.15 0:00
 胃がんの原因の大半が胃に感染するピロリ菌であることが判明し、ピロリ菌の除菌に幅広く健康保険が適用されるようになってから今年で9年。約40年にわたり毎年5万人前後で推移してきた国内の死者数が2018年には4万5千人を切るなど、胃がんによる死亡が顕著に減り始めた。13~19年に行われた約850万件の除菌による医療費の削減額が3800億円に上るとの試算もある。
 
 

 ▽広く保険適用

 「胃がんで亡くなる必要はない時代に入ってきた」。除菌による胃がんの撲滅を提唱してきた北海道医療大の浅香正博学長はこう話す。
 1997年まで日本人のがんの死因第1位で、国民病とも言われた胃がんは、従来、塩分の多い食事や喫煙が原因とされてきた。
 しかし、80年代にオーストラリアの研究者が胃に生息するピロリ菌を発見。90年代以降、これが潰瘍やがんの原因になることが確実になってきた。世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関は、ピロリ菌は胃がんの原因の8割を占めると表明。感染者が多い日本では胃がんの98%がピロリ菌が原因との研究もある。
 ピロリ菌は免疫が十分形成されていない乳幼児期に飲み水などを介して感染し、衛生状況が改善されてきた若い年代ほど感染率が低い。感染するとほぼ全員が慢性胃炎になり、10年以上かけて萎縮性胃炎に移行。うち一部で胃がんを発症する。
 除菌すれば胃炎の進行度に応じて発症リスクが下がることが国内外の臨床研究で確かめられ、日本では2000年に胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対する除菌が保険適用された。13年には慢性胃炎にも拡大され、事実上すべての感染者の除菌が可能になった。
 
 

 

 ▽内視鏡の効果
 内視鏡検査で慢性胃炎と診断された患者に血液などでピロリ菌の検査をし、陽性なら保険で除菌をする流れ。除菌しても胃炎が進んでいると胃がんを発症する可能性が残るため、定期的な内視鏡検査が推奨される。
 厚生労働省のデータによると、70年代以降、年間の胃がん死者は5万人前後だったが、2013年には4万8632人、18年は4万4192人、20年には4万2319人と急減。対策が難しい80歳代以上を除く70代以下に限ると、13~20年で24%も減った。
 しかし、浅香さんは「近年の減少は除菌の直接的な効果というより、除菌に伴い義務付けられた内視鏡検査で早期胃がんの発見が増えたことが大きい」と話す。胃がんになる人はまだ減っておらず、除菌による患者減少がはっきり現れるまであと2、3年かかるとみている。
 ▽「惜しい」
 一方、論文などで公表されているデータから、将来的な患者の減少や医療費削減効果は明らかだとする研究もある。
 北里大の小和田暁子客員研究員が昨年、国際専門誌で発表した論文によると、13~19年に行われた除菌によって生涯で約28万4千人が胃がんの発症を免れ、6万5千人の死亡を防ぐと推計された。医療費の削減額は3800億円。年代別の胃がん発症率やピロリ菌感染率、進行度別の生存率など20項目以上のデータを調べた。
 さらに、20年時点で約3500万人いるとされるピロリ菌感染者の全員を除菌できれば、108万人の発症を予防し、25万人の命を救え、1兆5千億円の医療費を削減できると試算している。
 浅香さんは「除菌は一時、年間180万件に達したが、関心が薄れてきたためか16年以降、減ってきた。除菌で胃がんリスクが大幅に減り、併せて行う内視鏡検査で早期発見できるのに、胃がんで命を落とすのは惜しい」と話している。(共同=戸部大)

最新記事

関連記事 一覧へ