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ごみ屋敷、排除より支援を 認知症や歩行困難が関係  1年以内の死亡率高く

2022.1.25 0:00
 高齢者が住まいに物をため込む状況は「ごみ屋敷」などと呼ばれ、近所とのトラブルの原因として扱われがちだ。しかし、東京都健康長寿医療センターの最新の研究では、該当者が認知症や足腰の弱りなどの不調をきっかけに、社会的に孤立している実態が明らかになった。精神医学でいう「ディオゲネス症候群」に当たり「誰もがなり得る状態で、地域から排除するのではなく、該当者を継続的に支援して、心身を壊す前に解決を図りたい」としている。
 
 

 

 ▽援助も拒否
 ディオゲネス症候群は1960年代に英国から初めて報告があった状態で、その後、たるの中に住んでいたとされるギリシャの哲学者ディオゲネスにちなんで名付けられた。高齢者が住環境や身なりなどの衛生に無頓着になり、援助の申し出も拒否する状態とされる。
 定義については長年の議論があるが、自分の面倒を見なくなる「セルフネグレクト」の一例と指摘される。
 同センター研究所「福祉と生活ケア研究チーム」の井藤佳恵研究部長(老年精神医学)は、東京都内で精神科医として訪問、対応した270人の高齢者から、この症候群に該当する人を抽出。その特徴を調べた。
 ▽低い自立度
 調査には、住居の散らかり方と衛生環境を指数化して評価する方式を採用。乱雑さやたまった物の量、風呂やトイレ、キッチンの清潔さなどを採点し、同症候群の該当者を判定した。その結果、該当者は61人。非該当者より独身・独居や生活保護受給の率が高く、暮らしを支える身内、縁者の不在がうかがえた。
 認知症の程度も進んでいて、中等度以上とされた人が54%に達した。59%に歩行機能の低下が、33%に排せつリハビリ用のパンツなどが必要な状態で、生活の自立度は低く、歩行や入浴に介助が必要な人が多かった。
 長期の死亡率には差がなかったが、1年以内では該当者の方が死亡率が高く、早期に支援する重要性と、支援によって改善を図れる可能性が示されたという。
ごみ屋敷と呼ばず当事者の支援をと訴える、東京都健康長寿医療センター研究所の井藤佳恵研究部長
ごみ屋敷と呼ばず当事者の支援をと訴える、東京都健康長寿医療センター研究所の井藤佳恵研究部長

 


 ▽無意識の求め
 これらの結果から井藤さんは「共通の課題はセルフネグレクトによる体調と住環境の衛生の悪化、支援を拒絶することによる社会的孤立にある」と総括する。
 井藤さんが知る該当者は、支援を求める煩わしさ、迷惑を掛けたくない気持ち、自立しているというプライド、人間関係のトラブルなど、ささいなきっかけで容易にそうした状況に陥っていた。
 本人が支援を拒絶すると、訪問はできても手助けは難しい。救急車で搬送されて初めて医療につながる例も珍しくなく、ごみを片付けたり引っ越したりしても本質的な解決にはつながらない。
 独居高齢者が増え続けている現在、地域のケア現場はどこも人手不足で、未発見の事例も多いはずだが、有効な支援策はあるのだろうか。
 井藤さんは「食べ物を買い込んで腐らせる人は、栄養状態に不安があるのかもしれない。傷にタオルを巻き付けているのは、自分で何とかしたいという表れかもしれない。そうした“無意識の求め”に気付き、改善を働き掛けたい」と話す。
 支援者がごみだと思って一方的に片付けても、本人にとっては大切な品物であるケースがある。一気に解決しようとせず、最初に当事者との信頼関係を築くのが大切だという。「手始めに、体を伸ばして寝られる場所を確保する、トイレや風呂の扉の前を片付けて利用できるようにするなど、基本の暮らしを取り戻すところから始めてはどうか」と提案する井藤さん。「心身の健康が危機に陥る前に支援の手を差し伸べてほしい」と話した。(共同=由藤庸二郎)

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