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偶然ではない競歩の複数メダル 「金」逃すも強化策積み上げの成果

2021.8.5 23:00 共同通信
東京五輪の男子20㌔競歩で銀メダルを獲得し、日の丸を掲げる池田向希(左)と銅メダルの山西利和=5日、札幌市
東京五輪の男子20㌔競歩で銀メダルを獲得し、日の丸を掲げる池田向希(左)と銅メダルの山西利和=5日、札幌市
 期待された金メダルはならなかったが、陸上男子20キロ競歩で池田向希が銀メダル、山西利和が銅メダルで複数メダルを獲得した。陸上の同一種目での複数メダルは1936年ベルリン五輪以来。日本の競歩は、前回リオデジャネイロ大会50キロで荒井広宙が初めて手にした銅メダルからさらにステップアップした。
 ▽目覚ましい躍進
 このところの日本競歩勢の躍進は目覚ましい。世界選手権では2015年北京大会で谷井孝行が初めての銅メダル、17年ロンドン大会では荒井が銀。19年ドーハ大会では山西が20キロで、50キロでは鈴木雄介がそろって金メダルの快挙を果たした。地元開催の五輪で目標を金メダルと高く掲げたのはうなずける。
 酷暑のドーハ大会での経験や、その後の科学的なデータを基にした綿密な暑さ対策も講じたが、ノーマークだったマッシモ・スタノ(イタリア)の逃げ切りを許した。身長160センチ台の池田、山西より、はるかに長身のスタノが残り3キロから長い脚を生かしてスピードアップ。小柄な日本勢は懸命に追ったが、山西がいつもの大会ではめった受けない警告の「レッドカード」を受けるなど、想定外の守勢に回ってしまった。
 惜しくも金メダルを取り逃がしたレースを、バルセロナ五輪50キロの代表だった園原健弘明治大学監督は「日本としては金を狙って取りにいった初めてのレースだが、それだけの力がなかった」と分析。イタリアは五輪の20キロ、50キロ競歩では過去5個の金メダルを獲得している伝統国。園原監督は「何度も狙って金メダルを取ってきた国との差」と指摘した。
 ▽「判定」もある特殊種目
 競歩は陸上競技の中では「判定」の要素を持つ特殊な種目だ。五輪ではこれまで判定に関するもめごとが多かったが、次第にルールが整備された。現在では審判員がチェックしやすいように周回コースで実施される。
 走る種目との違いが明確な規則は2種類。「ロス・オブ・コンタクト=地面から両足が同時に離れること」と「ベント・ニー=膝を曲げて接地」が違反行為で、選手の歩型に審判員が目を光らせる。歩型違反があった場合は審判員から「レッドカード」が示される。これが3枚出ると20キロではペナルティーとして2分間の「ピット待機」を命じられ、4枚目で失格となる。
 競歩の特性を踏まえ、日本勢は正確な歩型を徹底させることで力を伸ばしてきた。この日のレースでも、低い足の運びで体の軸がぶれない端正な山西らの歩型は際立っていた。
 1991年の世界選手権(東京)で、日本勢初の入賞を果たしたのが日本代表の今村文男コーチだ。長期の海外武者修行で強豪国のトレーニング法などを持ち帰り、実業団チームの壁を越えて広く伝えたことが現在の日本競歩の礎になった。その後も地道な強化施策を積み上げてきた。「金」逃しには厳しかった園原氏も「複数メダル獲得は偶然ではない」と、長年の成長過程を高く評価した。(スポーツエディター・船原勝英)