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こんな長距離ランナー見たことない 19歳・三浦が3000障害で史上初入賞

2021.8.3 17:09 共同通信
男子3000㍍障害決勝 水濠を越える三浦龍司(手前右)。7位入賞を果たした=国立競技場
男子3000㍍障害決勝 水濠を越える三浦龍司(手前右)。7位入賞を果たした=国立競技場
 世界の舞台でこれほど小気味良いレースをした日本の長距離ランナーを見たことがない。国内ではなじみが薄い3000メートル障害で、19歳の三浦龍司が日本勢初の7位入賞を果たした。この種目での決勝進出は、1972年ミュンヘン五輪で同じ順大出身の小山隆治(9位)ただ1人で、実に49年ぶりのこと。酷暑の中でのレース後もけろりとしており、「五輪の舞台で目標にしていたことはクリアできたが、悔しい気持ちもある。パリ五輪で納得できる走りをしたい」と頼もしかった。
 ▽3000障害の申し子
 予選は速いペースとなり、自分の持つ記録を6秒以上更新する8分9秒92の日本記録を樹立。これまでの日本選手なら力尽きる最後の1周でもメダル候補のアフリカ勢と互角に渡り合った。身長168センチと大きくはないが、手足が長くストライドが伸びる。障害の手前から加速して越えていけるのが三浦の強み。期待が高まった決勝でも序盤から好位置を保ち、離されかけた残り2周も踏ん張った。最後の水濠(すいごう)を越えると、順位を上げながらゴールを駆け抜けた。
 「3000障害の申し子」と言える飛びっきりの逸材だ。小学生時代から島根県浜田市の陸上クラブに通い、中学生時代は1500メートルでジュニア五輪などに出場する傍ら、ハードル種目でも非凡なセンスを示した。
 その後、日本初の100メートル9秒台をマークした桐生祥秀の母校、京都・洛南高へ進学。3000メートル障害で高いレベルの高校記録(8分39秒37)を樹立した。強靭(きょうじん)なばねと瞬発力は群を抜いており、三浦にかなわない短距離選手もいたという。五輪代表を決めた日本選手権の水濠で転倒した際も、長距離選手とは思えない俊敏さで起き上がって追走した。
 ▽キツネ狩りから生まれた種目
 英語での種目名は「スティープル・チェイス」。教会の十字架の付いた尖塔が「スティープル」で、キツネ狩りをする貴族が馬でこの尖塔を目指して獲物を「チェイス=追走」したことに由来する。そこから派生したのが「競馬の大障害レース」。あるとき英国オックスフォード大学の学生たちが「次は自分たちの脚で競走しよう」とレースを行ったことがきっかけで、19世紀半ば以降に競技化されたと伝わる。
 高さ91・4センチの障害を計28回、水濠を7回越えて走るレースは、人類の祖先が獲物を追って山野を駆け巡る姿そのまま。障害を越える俊敏さと巧みさに加え、耐久力が求められる過酷な種目だ。
 ばねのある三浦は、水濠の先の浅くなっている場所まで跳べるので、体力消耗やタイムロスを避けられる。今季、5000メートルで13分26秒78の自己記録で走った。昨年11月の全日本大学駅伝1区では区間賞をマークし、ハーフマラソンでU20(20歳未満)の日本最高を更新するスタミナも身に付けている。
 ▽「ケニアのお家芸」に挑む
 駅伝、マラソンが主流の日本では日陰の種目だ。対照的にこの種目を「お家芸」にしているのがケニアだ。驚くことに、1968年メキシコ五輪で1、2位を占めて以降、出場した前回リオデジャネイロ五輪までの11大会(76年、80年大会は不参加)すべてで金メダルを獲得していた。モロッコのバカリが優勝した今大会は、ケニアにとって歴史的な敗戦だったのだ。
 ケニア勢は起伏のある自然のコースで野性的なトレーニングを行っていることが強さの秘密だが、三浦も引けを取らない身体能力を持つ。強豪が集う欧州のレースで経験を積めば、さらなる記録更新は確実だ。初の五輪で自信をつかんだことだろう。世界で過去12人しかいない7分台も夢ではない。(スポーツエディタ―・船原勝英)