首相、緊急事態宣言を全面解除 外出や催し自粛、段階的に緩和


政府は25日夜、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を全面解除した。継続中だった北海道と首都圏の東京、埼玉、千葉、神奈川の計5都道県を対象から外した。安倍晋三首相は記者会見し、外出やイベントを含めたあらゆる社会経済活動を段階的に緩和する方針を示した。「わずか1カ月半で流行をほぼ収束させることができた」と強調。再流行に備え、医療体制の充実に2兆円の予算を積み増すと説明した。日本の感染症対策は新たな局面に入った。
私権制限を伴う緊急事態宣言は4月7日に7都府県を対象に初発令してから49日間で、全面解除となった。25日夜の政府対策本部会合で正式決定し、官報に緊急事態の終了を公示した。
会見で首相は「目指すのは新たな日常をつくり上げることだ。感染リスクをコントロールしながらどうすれば実施できるかという発想が重要だ」と社会経済活動の再開を呼び掛けた。一方、感染者の増加スピードが高まれば「2度目の宣言発出の可能性もある」と指摘。「完全なる日常を取り戻すには、かなりの時間を要する」と語った。
飲食店などの団体が業態別に発表したガイドラインを重視。「ガイドラインに沿った感染防止の取り組みに100%補助を行う」とした。感染者と濃厚接触した可能性を知らせるスマートフォン向け接触確認アプリについて、6月中旬をめどに導入する考えを示した。
医療面ではワクチン開発へ向け、特許権を管理する「特許権プール」と呼ばれる国際仕組みの創設を来月に予定される先進7カ国(G7)首脳会議で提案すると明かした。
これに先立つ自民党役員会で、県境をまたぐ移動の自粛を6月19日に全面解除する考えを示した。基本的対処方針を改定し、外出自粛や観光を巡る対応について(1)6月1~18日ごろ(2)6月19日~7月9日ごろ(3)7月10日ごろ以降―の時期ごとに指針を示した。5月末までは都道府県をまたぐ移動は避けるよう促す。
解除は(1)直近1週間の新規感染者数が人口10万人当たり0.5人以下(2)医療提供体制(3)検査体制―の3点を踏まえ、総合的に判断した。北海道と神奈川は感染状況が目安の0.5を上回ったが、医療体制の整備などを考慮した。
解除方針は有識者から意見を聞く諮問委員会で了承され、西村康稔経済再生担当相が国会に事前報告した。
