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医療用かつら作りが停滞 心待ちの小児がん患者に嘆き

2020.5.23 16:41 共同通信

医療用ウイッグを着ける女子高校生=2017年5月、福岡県(HERO提供)
医療用ウイッグを着ける女子高校生=2017年5月、福岡県(HERO提供)

 小児がん治療などで髪が抜けた子どものために無償で医療用ウイッグ(かつら)を提供するNPO法人の活動が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で停滞している。海外工場での髪の加工が困難になったためだ。ウイッグの到着を闘病生活の心の支えにしていた患者や家族の間で嘆きと戸惑いが広がっている。

 仙台市の「HERO(ヒーロー)」は年間に約25人の子どもにウイッグを無償提供してきたが、ヘアドネーション(髪の寄付)で届いた髪の加工を委託する中国の工場が2月に受け入れをやめたため、製作がストップした。子どもは頭が小さく、市販の大人用では代用できない。

 事務所などには工場に発送できない髪が入った段ボール約40箱が置かれたまま。中国の工場で作ったウイッグは一つ約9万円だが、佐藤真実代表理事(28)は「国内で加工すればウイッグ一つに50万円以上かかる。海外工場が再開しない限り、どうしようもない」と肩を落とす。

 HEROはこれまで資金調達のため、スタッフが演じる正義の味方と悪者が対決する子ども向けのショーを開き、年間約570万円の収入を得て、ウイッグの代金や活動費に充ててきた。だが感染拡大で9月までショーは全て中止になり、重要な収入源も断たれた。

 同様の活動をする「ジャパンヘアドネーション&チャリティー」(大阪市)でも同じ理由でウイッグ製作が止まっている。渡辺貴一代表(49)は「400人以上の子どもが待っている」と話す。寄付金に頼って運営する団体も多く、経済状況の悪化などで活動の継続自体が危ぶまれるという。

 国立成育医療研究センターの松本公一・小児がんセンター長によると、化学療法を始めると3週間ほどで髪が抜ける。「ウイッグで普段の姿を取り戻すのは精神的ダメージの軽減につながる」といい、「治療に向かう原動力となり得る」と重要性を指摘する。

 急性骨髄性白血病を患う小学6年の長女(11)を持つ埼玉県の母親(41)は「髪が抜けてから人前に出なくなり泣いてばかり。4月に届くはずだったウイッグを心待ちにしていた。明るい娘に戻るための希望だったのに」と話した。