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企業独自に風疹対策 検査や接種、従業員に 無料クーポン券活用も 

2020.5.13 17:12
 2018年夏以降、国内で風疹の流行が続いている。その中心は、過去に予防接種を受ける機会がなかった40代~50代の働き盛りの男性たち。国は、免疫の有無を調べる抗体検査やワクチン接種を無料で受けられるクーポン券を配布して活用を呼び掛けるが、利用は低迷している。そんな中、風疹を業務上のリスクと捉え、独自の対策に取り組む企業が増えてきた。
風疹ウイルスの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)
風疹ウイルスの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所提供)

 


 ▽赤ちゃんに障害
 風疹は、患者のせきやくしゃみ、会話で飛散したしぶきに含まれる風疹ウイルスの吸入や接触により感染する。2~3週間の潜伏期間の後、発疹や発熱、リンパ節の腫れなどが現れる。まれに脳炎などの重い合併症が起きる一方、症状が現れない「不顕性感染」の人が15~30%いる。特に心配なのは、妊娠20週ごろまでの女性が感染すると、赤ちゃんが難聴や白内障、心疾患などの先天性風疹症候群(CRS)になる恐れがあることだ。
 感染力が強く、職場で広がれば業務がストップしかねない。また、妊娠出産年齢の女性にとっては、とても安心して仕事ができる環境ではなくなってしまう。
 昨年7月中旬、自転車部品や釣り具を製造するシマノ(堺市)で月1回の安全衛生委員会が開かれた。労使で職場の健康や安全の確保について話し合うこの会議で、産業医の菅秀太郎さんは大阪府での風疹患者増加や、CRSの赤ちゃんが生まれていることを報告、会社として対策に取り組むべきだと提案した。
 ▽費用負担なし
 全会一致で了承されると、その後の動きは速かった。社内診療所と近隣の病院に協力を要請し、8月に入ってすぐに抗体検査を開始した。
 対象は19年度にクーポン券を配布された1962年4月2日~79年4月1日生まれの男性で、社内には約470人いた。このうち希望者約280人のクーポン券を会社が取りまとめ、抗体検査を実施。免疫力が不十分と判定された約60人全員がワクチン接種を受けた。
 「公的補助を利用したため会社や従業員の費用負担はなかった。社内の抗体保有率90%以上という目標も早々に達成できた」と菅さん。さらに「定期健康診断とは別に実施した結果、風疹対策という目的が明確になり、感染症への社内の意識も向上した」と話す。
 一方、社内での患者発生が企業の危機意識を高めたケースもある。自動車メーカーのマツダ(広島県府中町)は、昨年4月に風疹、5月に海外からの帰国者に麻疹(はしか)の患者が出たのを機に、従業員に対する風疹と麻疹の抗体検査、ワクチン接種に取り組んだ。
 
 

 


 ▽未接種裏付け
 対象は女性も含めた全従業員で、クーポン券のある男性以外の費用は会社が負担した。昨年7~9月、18~67歳の男女計1万6317人に抗体検査を実施。風疹では、このうち4544人(27・8%)がワクチン対象者と判定された。
 同社が運営するマツダ病院の滝雪歩さん(薬剤部)らが風疹について結果を分析すると、クーポン券配布対象の男性では免疫力の指標となる「抗体価」が極めて低い人の割合が、ほかの年齢層に比べ高かった。
 「1回もワクチン接種を受けていない人が多いことの裏付け。大規模な流行を防ぐためにも、早急な接種が必要だ」と滝さんらは指摘する。
 職場は風疹の主要感染源の一つと推測され、厚生労働省も予防には企業の協力が不可欠との認識だ。国立感染症研究所感染症疫学センターの多屋馨子室長は「従業員を風疹から守ろうという取り組みは素晴らしい。それがひいては、従業員家族や社会全体を守ることにもつながる。全国の企業に取り組みが広がってほしい」と話している。(共同=赤坂達也)

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