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羽田の救急不安いっぱい 病院到着に50分  自転車隊、導入を

2019.11.19 0:00
 2020年東京五輪・パラリンピックで主要な玄関口となる羽田空港で、傷病者への救急医療体制に不安があることが、専門医や研究者の指摘で明らかになった。国際線ターミナルから病院までの到着時間は東京消防庁管内全体の平均を大きく上回り、外国人ではさらに時間がかかる。関係者は、改善策として、欧米の空港で実績を上げている自転車救急隊の導入などを提言している。
 救急体制の不安が明らかになった羽田空港(18年4月)
 救急体制の不安が明らかになった羽田空港(18年4月)

 


 ▽医師不在の時間
 羽田空港には国内線と国際線で計三つのターミナルビルがあり、管理運営が分かれている。それぞれのビルには患者が自ら歩いてくることを想定したクリニックがある。厚生労働省東京検疫所東京空港検疫所支所にも医師が常駐するが、倒れた傷病者の元に駆け付けるのは本来業務ではない。このため、各ビルの管理者は傷病者が発生した場合、原則として119番で救急車を要請することが多い。
 問題はこの後だ。
 同支所の医師らの報告では、2015年に東京消防庁救急隊が国際線ターミナルから医療機関に搬送した167件で、平均到着時間は52分。同庁管内全体の39分を大幅に上回った。成田空港のクリニックには24時間医師が待機しているが、羽田では各クリニックの診療時間外の救急車要請が全体の37%を占めていた。
 特に問題は外国人対応。同支所の報告では、日本人の平均時間は49分だったのに対し、外国人は61分と時間がかかった。
 ▽外国人対応
 羽田直近の3次救命救急病院として患者を多数受け入れてきた東邦大医療センター大森病院。救命救急センター長を長く務めた吉原克則同病院救急・災害統括部顧問はこの原因について「特に軽傷、軽症者で、救急車に収容してから出発までの時間が長い。コミュニケーションの問題で、搬送への同意や搬送先の病院決定に時間がかかるのではないか」とみている。
 吉原さんらの最新の調査研究では、救急車の出発から到着までの時間は管内全体と同じだが、患者にたどり着くまでは2分余りの差があった。搬送時間も5分余り、羽田空港からの方が長い。
 吉原さんは「救急隊がビルに到着してから患者にたどり着くまでの動線が長く、複雑なことで時間がかかるのが最大の問題だ」と話す。
ロンドン・ヒースロー空港のターミナルビルを自転車で巡回する救急隊員=2015年(北村伸哉センター長提供)
ロンドン・ヒースロー空港のターミナルビルを自転車で巡回する救急隊員=2015年(北村伸哉センター長提供)

 


 ▽ロンドンと大差
 航空医療搬送研究所の青木悟郎さん、北村伸哉君津中央病院(千葉県)救命救急センター長、中村隆宏関西大教授らの研究グループは、羽田と同規模のロンドン・ヒースロー空港の救急体制を現地調査し、比較した。
 羽田との大きな違いは、日本の救急救命士より広く医療行為が認められている救急隊員が、1日5人体制で常駐していることだ。ビル群を3エリアに分け、自動体外式除細動器(AED)をはじめ応急処置の装備を携えて自転車でビル内を巡回。傷病者が発生すれば平均2分で駆け付けられる。最初の医療行為までの時間が大幅に短い。
 滑走路などを含む制限区域内の体制も違う。ヒースローでは、空港専用救急車が常駐し、先導なしで空港内を走れる。運転手も空港内の通行方法や地理を熟知し、現場に急行する。救急ヘリが飛行機のそばまで乗り入れることも可能だ。
 一方、羽田では空港外の消防署の救急車がゲート通過の手続きを取り、制限区域内では先導車と同行する必要がある。また、東京都はドクターヘリを導入していない。
 青木さんらは、羽田の現状を改善するため、救急隊を導入するための法整備を急ぐことや、制限区域内への救急車の配置、周辺自治体とのドクターヘリ乗り入れ協定の締結などを提言している。(共同=由藤庸二郎)

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