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第3部「がんと老い」(4)光を当てて細胞破壊  高齢でも負担小さく

2018.12.5 16:03 中沢祐人
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 光を当てると、がん細胞だけがはじけるように壊れていく。そんな新しいがん治療の臨床試験(治験)が国内で始まった。開発したのは米国立衛生研究所(NIH)主任研究員の小林久隆(56)。「手術などに比べ患者の身体的負担が小さく、高齢者にとっても新しい治療の選択肢になる」と話す。IT大手楽天会長兼社長の三木谷浩史(53)が支援し、実用化を目指している。
 
米メリーランド州にあるNIH
米メリーランド州にあるNIH

 がん細胞だけにくっつく抗体と、光に反応する化学物質をつなげた薬剤を患者に投与し、がんの部分に光を当てる。すると化学物質が変化して、がん細胞の膜を破壊する。これが「がん光免疫療法」だ。テレビのリモコンにも使う安全な「近赤外線」を使用し副作用が少ないことも特徴だ。

 小林によると先行する米国の頭頸部がんに対する治験では、手術や抗がん剤などの治療ができない患者15人のうち14人で、がんが小さくなった。がんの進行が抑えられたケースもあったという。
 
 課題はある。治験では、がんは消えたものの、血管から出血し死亡した例があった。さまざまな種類のがんに対応する抗体の開発も必要だ。
 
 小林はもともと放射線科医だった。副作用が大きく、再発も多いがん治療に限界を感じ、新しい治療を研究しようと1990年代に渡米する。
 
 2011年、米医学誌ネイチャーメディシンにマウスを使った実験でがん光免疫療法に効果があったとする論文を発表。当時のオバマ米大統領が一般教書演説で紹介するなど世界中から高く評価された。
 
 大手製薬会社を含む複数の企業から製品化の申し出がある中、米ベンチャー企業アスピリアン・セラピューティクスと契約を結ぶ。だが資金集めが進まず、1年近く開発が中断する事態に。そんな中、救いの手をさしのべたのが三木谷だった。
 
 膵臓がんの父、良一のため治療法を探していた三木谷は13年春、知人を通じ、同じ兵庫県出身の小林と面会。「賭けてみる価値はある」と確信し「治験をやろう」と協力を約束した。
 
米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員(右)と楽天の三木谷浩史会長兼社長
米国立衛生研究所(NIH)の小林久隆主任研究員(右)と楽天の三木谷浩史会長兼社長

 同年、良一は亡くなり治療はできなかったが、三木谷は父のために個人的に用意していた資金など約8億円を出資。その後数十億円を追加し、現在はアスピリアンの会長として実質的に経営権を握る。日本でも18年3月から国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で治験が行われている。

 三木谷は出資を「フィランソロピー(社会貢献)」だと説明。「世界のがん治療を変えたい」という小林と三木谷のタッグで、実用化の日が着々と近づいている。(敬称略、年齢・肩書は取材当時)

 

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