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第2部「介護保険はどこへ」(4)特養不足、首都圏危機  整備困難、遠隔地「移住」

2018.11.20 11:03 千葉響子
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 首都圏で特別養護老人ホーム(特養)が足りない。埼玉、千葉、東京、神奈川の1都3県では、2025年までに75歳以上の人が急増する上、建設用地が高く、介護人材が確保できない「三重苦」だ。在宅介護が難しい高齢者にとって特養は「ついのすみか」だが、施設整備の在り方を見直す自治体も出てきた。
 
 伊豆半島の最南端に位置する静岡県南伊豆町。18年3月、「エクレシア南伊豆」がオープンした。約135キロ離れた東京都杉並区と同町が特養を共同整備した全国初の試みで、町が50年の期限付きで用地を無償で貸与、建設費の一部を区が負担した。全90床のうち約50床が区の利用者用だ。
 
 「満足度は120%」。杉並区の淡路真(65)は温暖な気候や充実した設備が気に入り、母親の米子(88)の入所を決めた。区内の特養は約千人待ち。民間の老人ホームは月額利用料が3倍近くになる。「距離の壁は息子である自分の努力で乗り越えたい」と話す。
 
エクレシア南伊豆で暮らす淡路米子(左)
エクレシア南伊豆で暮らす淡路米子(左)

 杉並区は統廃合した小学校や新規購入した土地を使い、急ピッチで特養整備を進めているが、担当者は「やれることはやり尽くした感がある」。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、1都3県に住む75歳以上の人は25年に約570万人と、15年に比べ1・4倍に増える。地域で受け皿が足りないとなれば、遠隔地への〝移住〟が進むのだろうか。
 
 
 
 都内では豊島区も地価高騰に悩み、埼玉県秩父市や千葉県富津市での特養整備を検討した。だが結局、白紙に戻した。特養不足の状況は変わらないが「近くに施設の空きが出るまでは自宅で暮らし続けたい」という希望が多く、提携する近隣自治体の施設に入所できる順番が来ても、断る人が続出したためだ。
 
 豊島区の担当者は「特養のニーズを精査し直し、将来的には在宅サービスの充実に軸足を移していく。区外に特養を建設する他の自治体の動きには追随しない」と話す。
 
 お隣の埼玉県。20年度末までにベッド3679床分の特養を新たに整備する計画を立て、18年3月に県議会へ提案した。しかし議会は空きベッドが現時点で702床あることを問題視。県は18年度から整備に着手する計画だったが「空きベッドの活用策が示されていない」として見直しを迫られた。
 
 多数の空きベッドは、介護福祉士ら専門職が確保できなかったのが原因。器はできても、担い手が足りない。県は「人材確保と施設整備を同時並行で進めなければ25年を乗り切れない」と焦りの色が濃い。
 
(敬称略、年齢・肩書は取材当時)

 

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