メニュー 閉じる

47NEWS

全国

全国

第1部「ポスト平成の病院改革」(6) 高齢化率44%、住民力の町 医療と介護の壁なくす 

2018.11.5 15:36 市川亨
Share on Google+ このエントリーをはてなブックマークに追加
 高齢化率は44%、住民の4人に1人は75歳以上―。四国の山間部に位置する高知県檮原町は、団塊の世代が全員75歳以上になる2025年の日本の将来像よりもさらに先を行く。人口は減少が続き約3600人。だが、この町で暮らすお年寄りは総じて元気だ。
 
 「運動だと思って、買い物に行ってな」。町内でガソリンスタンドを営む中山博行(63)は、隣家の浅井栄子(78)=仮名=を時折訪れ、こうして声を掛ける。
 
 浅井は夫に先立たれ、1人暮らし。膝が悪く歩行は不自由だが、それでも手押し車を使って百数十メートル先の店に自分で買い物に行く。介護保険でヘルパーが掃除にやってくるのは週1回だけ。ごみ出しは、町の有償ボランティアの仕組みを使って中山がやってくれる。
 
 18年1月、浅井は体調を崩し、救急車で町の病院に入院したが、寝たきりになることもなく10日ほどで退院した。「近所のみんなが気を付けてくれるこの町だから、家にいられる」と話す。
 
 浅井のような「時々入院、ほぼ在宅」という生活は国が目指す方向性と合致する。鍵は医療・介護の集約と連携だ。
 
 町内唯一の病院で浅井が入院した町立檮原病院は、介護や福祉を担当する保健福祉支援センターと建物が同じ。1996年に町が「医療と介護を一体的に提供しよう」と機能を集約した。「物忘れがひどくなったようだ」と気になる住民がいれば、医師や保健師、介護職らが毎週集まる会議で常に情報を共有する。
 
高知県檮原町での介護予防の集い。保健師(手前)が高齢者らの健康をチェックする
高知県檮原町での介護予防の集い。保健師(手前)が高齢者らの健康をチェックする

 病院長の池田幹彦(45)は「医療職と介護職の間に壁は全くない。こんなことは珍しい」。入院しても退院に向けた支援がスムーズにできる。自宅や老人ホームなどで最期を迎える人が他の自治体よりも多く、過去3年平均で24・3%と全国の数値を5ポイントほど上回る。

 檮原町のもう一つの特徴は「住民力」の高さだ。高齢者が介護予防のために集まる毎月の会合は住民が主体で運営。地区の区長は保健衛生から防災まで1人で何役もこなす。健康づくりの活動が活発で健診の受診率は79%(2016年)と全国トップクラス。医療・介護の制度の隙間を住民の「共助」が埋めている。
 
 ただ、池田には危機感もある。「住民全体の高齢化で地域の力が落ちてきている。病院や施設に入る人が今後は逆に増えてしまうかもしれない」
 
 日本が迎える未曽有の「超寿社会」。医療や介護の専門職に頼り切るのではなく、住民の力が試されてもいる。(敬称略、年齢は取材時点)

 

最新記事

関連記事 一覧へ