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第3部「平和国家、続けますか」(7) 無人機、憎しみを増幅  「非対称」がテロ招く(新しい戦争①)

2018.10.30 7:05
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 日本にとって最も教訓となる戦闘を尋ねると「日本海軍が大敗を喫したミッドウェー海戦」との答えが返ってきた。1942(昭和17)年、第2次世界大戦中の出来事だ。「日本は勝つと思い込んでいた。油断とか人間性が見えますよね」

 加藤健二郎(かとう・けんじろう)(57)は、兵士になろうと26歳で会社を辞めた。ミリタリー趣味は少年時代から。フランス軍の外国人部隊に志願したがかなわず、中米エルサルバドルで戦場ジャーナリストになった。89(平成元)年にはニカラグア内戦、99(平成11)年はNATO(北大西洋条約機構)のユーゴスラビア空爆。平成に入ってからの戦地取材は、62回を数える。

インタビューに答える加藤健二郎(敬称略)
インタビューに答える加藤健二郎(敬称略)

 地面ではねた銃弾が当たって骨折したことがある。テロリストと疑われて殴られ、気絶したこともある。「戦争という極限状態の人間心理に触れたくて、危険を承知で入った世界」だったが、次第に気持ちは冷めていった。

 数百キロ離れた場所から標的を破壊する巡航ミサイル「トマホーク」。相手のレーダーに映らないステルス戦闘機―。生身の人間がどう動こうと、科学技術力の差が勝敗を分ける。「劣った国」の一般人の血が、あっけなく流れた。

 防衛庁(当時)の委嘱で助言を行う「オピニオンリーダー」の一員だった2003(平成15)年、イラク戦争が始まり、首都バグダッドに向かった。空を見上げると、窓がない奇妙な航空機が飛んでいた。無人偵察機プレデターだった。「こういう時代なんだな」。15年間の戦場取材に終止符を打った。

 汚く、危険で、単調な最前線の任務から人間を解放する無人技術は、各国で飛躍的に開発が進んだ。

 航空自衛隊の1等空佐は16(平成28)年発表の論文で、キラーロボットとも呼ばれる「自律型致死性兵器」は、人工知能(AI)技術が進展すれば「いずれ戦場に登場してくる」と書いた。

 「戦争のリスクを減らすのに有益」との意見が国連の場で紹介されたこともある。推進論者の分析は冷徹だ。「自己保存の意欲がない分、人間より慎重に致死的武力を行使することが可能」「人間の感情(興奮、恐怖、疲労、復讐心(ふくしゅうしん))から生じる判断ミスも回避」

中米エルサルバドルで撮影した写真を手にする加藤健二郎=東京都豊島区(敬称略)
中米エルサルバドルで撮影した写真を手にする加藤健二郎=東京都豊島区(敬称略)

 加藤は、アフガニスタンの住民の言葉をそらんじる。「有人機に攻撃されるより、無人機にやられた方が憎しみが強い」。操縦者は米国のクーラーが効いたどこかの部屋にいる。同じフィールドに立っていない。

 「圧倒的な軍事力が世界に秩序を与えるという大国の論理が、平和とは逆の結果を招いていないか」と加藤は語る。

 対テロ戦で米国が無人攻撃を繰り返す一方で、欧米の都市では銃や爆弾によるテロが頻発している。軍事的な強者と弱者による「非対称な戦争」。危険なのは、もはや最前線だけではなくなった。(敬称略、年齢・肩書は新聞掲載当時)

 キラーロボット 敵味方の識別や攻撃の判断をAIにゆだねる殺傷兵器で、危険性や倫理の問題を問う声が多い。2015(平成27)年、米国にある研究組織が英物理学者の故スティーブン・ホーキング博士らの署名を集め開発禁止を訴えた。

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