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第3部「平和国家、続けますか」(6) 精鋭隊員、自ら命絶つ  帰国後も心むしばまれ(戦い終えて③)

2018.10.30 7:04
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 陸上自衛隊員延べ約5600人のうち21人、航空自衛隊員延べ約3630人のうち8人―。2004(平成16)年以降、イラクへ赴任するなどして、帰国後自殺した隊員の人数だ。

 「体力的にも精神的にも問題ないとして選抜された『精鋭隊員』がこんなに自殺している。かなり高い割合だ」。現地部隊を何度か訪ね、カウンセリングを実施したこともある元陸自の医官は指摘する。

 防衛省は自殺の理由を公表していないが、元医官は「長期にわたると心身に悪影響を及ぼす『過緊張状態』の隊員が、3割に上る部隊もあった。経験したことのない過酷な環境と過度な緊張も要因の一つだったのではないか」と分析する。

2004年2月、イラクとの国境付近の米軍キャンプで、米兵と打ち合わせする陸上自衛隊員=クウェート(共同)
2004年2月、イラクとの国境付近の米軍キャンプで、米兵と打ち合わせする陸上自衛隊員=クウェート(共同)

 自殺した陸自隊員の一人は東北地方の40代の医官だった。隊員の治療だけでなく現地の病院の運営や機材の指導も担い、徹夜の作業が続いた時もあった。現地では周囲に「疲れている」とたびたび漏らしていた。帰国後にうつ症状が出て自殺を図った。入院したが改善せず、帰国から1年後に自ら命を絶った。遺書はなかった。

 宿営地の警備の任務に当たり、ロケット弾による相次ぐ攻撃の対応に追われた30代の隊員は、帰国後、車内に自ら練炭を持ち込み亡くなった。

イラクで任務に就くライアン・カーラー=撮影年月日不明(本人提供・共同)(敬称略)
イラクで任務に就くライアン・カーラー=撮影年月日不明(本人提供・共同)(敬称略)

 同じ時期、イラクで戦闘に明け暮れた米兵も深刻な苦しみを抱える。

 元米陸軍兵ライアン・カーラー(34)=カリフォルニア州=は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に今も苦しむ。町中で軽油のにおいを嗅ぐと、同じ燃料を使う装甲車で戦っていた戦地を思い出し「激しい吐き気に襲われる」。

 開戦時から2回にわたり計2年2カ月間、イラクに赴任。装甲車が地雷で爆破され、運転手の脚が壊れたドアに挟まる事態に遭遇した。

 上官の指示で、手持ちのナイフを使って脚を切断し運び出した。ほとばしる温かい血、夜空に響く叫び声、そして絶命。「最後まで小銃を握りしめていた姿が目に焼き付いている」。多くの仲間が目の前で死に、自分だけが生き残った罪悪感にさいなまれる。

 帰国直後は記憶障害、衝動的な怒りに襲われた。「消えてなくなりたいと何度も思った」。自分の舌をかみ切ろうとして家族に止められた。「血で染まった建物の上からイスラム教徒の男が米兵を切り刻んで自分に向かって肉片を投げつける」。悪夢にうなされ目が覚める。

インタビューに答えるライアン・カーラー(共同)(敬称略)
インタビューに答えるライアン・カーラー(共同)(敬称略)

 父ティム(60)は、銃を自室の引き出しに入れ、鍵をかけて隠した。息子がいつ自殺してしまうのかと不安な日々を過ごし、一時は抗うつ剤が手放せなかった。

 帰還兵の苦痛は米国社会をむしばむ。米退役軍人省によると、帰還兵の自殺者はイラク戦争後に増加傾向を示し、1日に20人以上の高止まりが続いている。(ロサンゼルス、東京共同、敬称略、年齢・肩書は新聞掲載当時)

 隊員自殺に関する答弁書 政府は2015(平成27)年に閣議決定した答弁書で、イラクなどに派遣した陸自と空自の隊員計29人が自殺、インド洋に派遣された海自隊員29人も自殺したと公表。派遣との因果関係の特定は困難としている。

 

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