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生物の力で水質の回復を 東京湾・横浜港に実験海域

2018.5.13 0:00 共同通信

 岩をびっしり覆う白い筒状の生物、カタユウレイボヤがモニターに映った。5月の世界トライアスロンシリーズ横浜大会を前に開かれた環境啓発イベントのブース。横浜港の山下公園前の海中から、ダイバーが光ケーブルを使い実況中継した。

 中継されたのは生き物の力で海水の水質を回復させ、多様な種がすめるようにする実験区の光景。2013年から横浜市環境創造局とJFEスチールが共同で研究調査してきた。

 カタユウレイボヤが口先を動かす映像を見て、子どもたちがダイバーと話す。「ご飯を食べてる」。「海水の濁りに入っている栄養を口から入れて、きれいになった水だけを出してくれるんです」。ナマコやメバル、アメフラシの卵も見えた。

 実験区は護岸下の浅瀬から幅40メートル、沖合90メートルの泥地まで傾斜地に造られた。09年に大会が誘致され始まった「きれいな海づくり」事業の一環だ。

 夏場の水深4メートルより深い海底は、生き物のいない貧酸素状態のヘドロ層が広がる。その海底に、製鉄の過程で出るリサイクル材である砂利状の鉄鋼スラグ製品を敷き、「生物付着基盤」を造った。かさ上げされた地盤に大きな石形のスラグ製品や自然石で人工魚礁(つき磯)を築いた。

 潜ってみると浅瀬から沖合90メートルのつき磯までワカメの森が広がる。これだけ広範囲に付いたのはこの冬が初めてという。

 「おみそ汁のワカメと色が違う。大きいね」。中継で海に茂る姿を初めて見た羽野沙蘭(はの・さらん)さん(9)は、興奮気味だった。

 5年間の定期調査によれば、手を施していない海底に比べて、二枚貝やホヤなど水をろ過する生物が根付いた。かさ上げした一帯は、生き物が夏の貧酸素状態から逃げ、避難する場所に。魚の種類も増える傾向にある。

 環境創造局は、ろ過食性生物の重量を量り、実験海域全体で1日平均25メートルプール17杯分(約8400キロリットル)の水を浄化していると推測。「周囲の水と入れ替わるので即効性はないが、生き物の力で少しずつ環境を変えていきたい」と期待する。

 この春、5年間の共同研究は終了したが、市は実験区を残し調査を続ける意向だ。中継を見た市民は「横浜港にこんなに生物がいるのか」と驚いた。数年後、さらに増えているだろうか。(共同通信写真部・京極恒太、鷺沢伊織、西沢幸恵)

*写真・記事の内容は、2018年4月27日までの取材を基にしたものです。