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扉を開けて ルポ ひきこもり

仕事や学校に行かず、社会とのつながりを持たない「ひきこもり」。長期化 高年齢化が進む中、新たな生き方の模索や支援の現場をルポする。

連載企画「扉を開けて~ルポひきこもり 精神医療の闇」(3) 訴訟で真相究明へ  社会の奥深くに「偏見」

2022.6.21 16:19

 東京都内の精神科病院を退院した高橋哲二(たかはし・てつじ)さん(37)=仮名=は、その後、支援者の協力を得て「あけぼのばし自立研修センター」から脱出。センターの運営業者は破産した。


 2019年11月、不必要な医療保護入院で肉体的、精神的苦痛を受けたとして、病院に550万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。

 医療保護入院は、患者に病気の認識がない場合に、指定医が治療の必要性を判断し、家族らの同意があれば可能となる。患者の自由を著しく制限するため、法律で運用基準が定められている。

 高橋さんのケースでは、果たして入院治療が必要だったのだろうか。

 当時のカルテによると、センターから病院に連れてこられた際に「多動、不穏」の症状があったとされるが、高橋さんは「努めて冷静、慎重に対応した」と話す。暴れれば入院の論拠を与えてしまうと考えたからだ。

 さらに入院中の診断名も「急性一過性精神病性障害」「統合失調症」「広汎性発達障害」とめまぐるしく変わっており、いつから、どのような疾患だったと判断したのかはっきりしない。

 これに対し、病院側は訴訟で「心理検査を受けていないので確定的な判断はしていないが、発達障害の疑いがある状態だった」と主張している。

 センターと病院の関係性も不透明だ。大学卒業後、就職をせずに自宅で勉強していた高橋さんに対し、親の依頼を受けたセンターのスタッフが自立支援の名目で施設に監禁。衰弱した高橋さんを本人に内密で病院に連れて行った。

精神科病院に強制入院させられた体験を語る高橋哲二さん(仮名)
精神科病院に強制入院させられた体験を語る高橋哲二さん(仮名)

 

 訴訟では、過去にもセンターからこの病院に入院となった人がいることが明らかになった。

 高橋さんと同様に自宅から無理やり連れ出され、別の施設から脱走したことがあるという男性は、自立支援業者と精神科病院の持ちつ持たれつの関係をこう証言する。

 「仕事でうつになり、クリニックを受診したところ、医師が施設に入所させるよう家族に勧めた」。子どもを厄介払いにしたい親と、入所者を物色する施設。そこに医師が介在し、業者から顧問料を受け取ることもあるという。

 高橋さんは自らの体験を振り返り、つぶやいた。「仕事をせず、所得のない人間は、これぐらいされても構わないという偏見が、社会の奥深くにあるのではないでしょうか。それは『魂の殺人』です」

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