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扉を開けて ルポ ひきこもり

仕事や学校に行かず、社会とのつながりを持たない「ひきこもり」。長期化 高年齢化が進む中、新たな生き方の模索や支援の現場をルポする。

連載企画「扉を開けて~ルポひきこもり 精神医療の闇」(2) 医師は王様、おびえる患者  入院50日、「制裁」と確信

2022.6.21 16:12

 2018年5月11日、高橋哲二(たかはし・てつじ)さん(37)=仮名=は「あけぼのばし自立研修センター」から約15キロ離れた東京23区内の精神科病院に車で到着した。外来のほかにデイケアや訪問診療を手がけ、100以上の病床がある比較的規模の大きな病院だ。
 

 小部屋で待たされ、しばらくすると30代前半とおぼしき男性医師が現れた。「今日から入院してもらいます」。無表情でそう言い、いくら理由を尋ねても「もう決まったことだから」と取り付く島がない。やりとりはわずか10分ほどだった。
 

 そのまま隔離室に移され、すぐに看護師が手足と胴をベッドに拘束した。カルテには隔離、拘束の理由として「不穏、多動」などと書かれているが高橋さんは否定する。
 

 「センターに監禁されていた9日間、ほとんど何も食べていなかったので、そもそも暴れる体力などありませんでした」
 

 拘束は3日で解かれたが、閉鎖病棟での入院は50日間続いた。診断は広汎性発達障害。医師は母親から成育歴を聞き取り、こう言った。「あなたは10年間キリスト教会に通い続けていたよね。社会通念から外れている。それが診断の根拠です」
 

 病棟内の光景は異様だった。遺産を巡って家族とトラブルになり、入院させられたという初老の男性は、夜中に看護師と言い合いになり、翌日、ベッドに拘束された。
 

 反抗的な態度を見せていた別の患者は、電気けいれん療法(電気ショック)を受け、ろれつが回らない状態で部屋に戻ってきた。
 

 医師は王様―。そんな雰囲気が漂い、患者は皆おびえていた。高橋さんはいつか真実を外部に伝えようと、ロビーに置かれていた塗り絵用の紙の裏に、日々の出来事や思いを克明に書き留めた。
 

 

精神科病院に強制入院させられた高橋哲二さん(仮名)が、入院中、塗り絵用の紙の裏に書き留めたメモ
精神科病院に強制入院させられた高橋哲二さん(仮名)が、入院中、塗り絵用の紙の裏に書き留めたメモ

 

 〈医療保護入院の正当性に疑問〉
 〈アウシュビッツ強制収容所と重なる〉
 

 5月下旬、医師と母親が面談。母親の希望で、自宅ではなく、センターに戻すことが決まった。
 6月29日、退院の日。迎えにきたセンターのスタッフが「誓約書」を渡し、サインするよう命じた。
 

 〈実家に帰らず、カリキュラムに全参加すること。ルールを守れない場合は、再度入院することに同意致します〉
 

 高橋さんは入院が医療目的ではなく、センターの指示に従わない入所者への制裁だったと確信した。

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