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扉を開けて ルポ ひきこもり

仕事や学校に行かず、社会とのつながりを持たない「ひきこもり」。長期化 高年齢化が進む中、新たな生き方の模索や支援の現場をルポする。

連載企画「扉を開けて~ルポひきこもり 精神医療の闇」(1) 「未成熟子」施設に監禁 行き先告げられず病院へ

2022.6.21 16:06

 これから入院してもらいます―。白衣に身を包んだ若い男性医師の言葉に、高橋哲二(たかはし・てつじ)さん(37)=仮名=は一瞬、耳を疑った。2018年5月11日、東京都内の精神科病院。「私は病人ではありません。無理やり連れてこられたんです。助けてください…」


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 高橋さんは大学卒業後に就職せず、進学を念頭に神奈川県内の自宅や図書館で経済学の勉強をしていた。5月3日の昼、普段通り部屋で食事を取っていると、父親と4、5人の男が突然現れた。

 男らは「あけぼのばし自立研修センター」(東京)のスタッフを名乗った。ホームページでひきこもりやニート、家庭内暴力などの問題を解決すると宣伝し、施設に強引に連れて行く手口から「引き出し屋」とも呼ばれる民間業者で、近年社会問題化している。「今からこの人たちのお世話になるんだ」。父親は700万円を支払い、無断で入所契約を結んでいた。

 センターが事前に連絡していたのか、周囲には警察官の姿もあったが、大声で助けを求めても見て見ぬふりだった。男らに両脇を挟まれ、車の中へ。着いたのは都内にあるマンション地下の一室。窓はふさがれ、外の様子は一切うかがえない。

高橋哲二さん(仮名)が監禁されたマンションの地下室(右)=2019年1月、東京都内
高橋哲二さん(仮名)が監禁されたマンションの地下室(右)=2019年1月、東京都内

 

 「家に帰してください」
 「おまえのような未成熟子に選択権はない。われわれの研修プログラムに参加しなさい」

 一日中、スタッフとの押し問答が続き、水以外の食べ物はほとんど口にしなかった。センターの報告書を見ると、高橋さんの扱いに困り、当初から入院させようとしていたとみられる。

 〈5月5日 (研修が行われる)教室の見学を考えるとの発言もあったため、○○病院の件は一度白紙に戻します〉

 一方、母親には高橋さんの体力が弱っていると説明し、入院への同意を求めていた。

 〈5月8日 (母親は)精神科はかわいそう、内科で入院できませんかと言っていました〉

 その3日後、行き先を告げられぬまま、高橋さんを乗せた車は6階建ての病院の救急搬送口に到着した。同乗していたスタッフに尋ねた。

 「ここは何科ですか」
 「精神科です」
 「えっ?」

 健康診断を受ける必要があるとは言われていたが、予想は裏切られた。今も脳裏にこびりつく、恐怖と屈辱の日々の始まりだった。

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 自立支援をうたう民間業者と精神医療が不透明な形で関わる事例が明らかになった。当事者の人権は守られているのか。ある男性の体験を伝える。

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