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社会

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扉を開けて ルポ ひきこもり

仕事や学校に行かず、社会とのつながりを持たない「ひきこもり」。長期化 高年齢化が進む中、新たな生き方の模索や支援の現場をルポする。

8050問題と自治体(下) 強みを生かし、役所改革  生きづらさに寄り添って

2020.7.18 19:02

 「誰もが相談できる担当部署を早急に明確化してほしい」。2019年8月、横浜市役所の会議室。KHJ全国ひきこもり家族会連合会の支部代表らが担当者と向き合った。市内では前年から、高齢の親の遺体を放置したとして40~50代の子どもが逮捕される事件が相次ぎ、80代の親と50代の子が孤立する「8050問題」が顕在化した。

 

「8050問題」の相談窓口設置を要望するKHJ全国ひきこもり家族会連合会の支部代表ら(左側)=2019年8月、横浜市役所
「8050問題」の相談窓口設置を要望するKHJ全国ひきこもり家族会連合会の支部代表ら(左側)=2019年8月、横浜市役所

 

 実はもっと早い段階から、市は危機感を抱いていた。17年度に行った実態調査で、40~64歳でひきこもり状態にある人が約1万2千人(推計)に上ることが判明。「いよいよみんなで考えないと、というタイミングで家族会から要望をいただいた」(健康福祉局生活福祉部の鈴木茂久部長)


 横浜市はもともと福祉の先進自治体として知られる。介護などの相談に乗る地域ケアプラザは各中学校区に140カ所以上あり、NPOなどの民間団体と連携し、若者支援にも力を入れてきた。だが各家庭が抱える多様かつ複雑な課題に対応しきれなくなっていた。


 小さな自治体であればワンストップ型の窓口を作りやすいが、大都市ではなかなか難しい。「それなら、今ある強みを生かそう」と発想を転換。関係機関が長年培ってきた住民とのチャンネルを有機的につなぎ、制度のはざまにこぼれ落ちるのを防ぐため、高齢者や障害者の施策を受け持つ健康福祉局とこども青少年局を中心に協議を始めた。


 20年度にはまず、共生社会への共通理解を深めるための支援指針を策定。「相談を受けて終わりではなく、情報を共有し、必要なアプローチを議論する会議体のようなものをイメージしている」(担当者)といい、21年度から本格実施する考えだ。キーワードは「チームによる世帯支援」。鈴木部長は「今年は助走期間。相当大きな改革になる」と力を込める。


 自治体を財政支援する改正社会福祉法が成立し、こうした取り組みは今後、各地に広がるとみられるが課題も多い。


 ひきこもりの人や家族を支援するNPO法人「ふらっとコミュニティ」(山口県宇部市)の山根俊恵代表(山口大大学院教授)は「支援の現場では表面的な問題だけを見て『このままではいけない』と考え、本人や家族の『否定』につながるケースが多い」と指摘。ひきこもらざるを得なかった「生きづらさ」や家族の苦悩に丁寧に寄り添うために、単なる窓口ではなく、専門知識を持つ人材や中核となる機関が必要だとしている。

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