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扉を開けて ルポ ひきこもり

仕事や学校に行かず、社会とのつながりを持たない「ひきこもり」。長期化 高年齢化が進む中、新たな生き方の模索や支援の現場をルポする。

8050問題と自治体(中) 40年ひきこもり、支援途絶  「真相知りたい」と妹

2020.7.18 18:58

 2018年11月、横浜市金沢区の公団住宅で母親(76)の遺体を放置したとして、同居していた男性(49)=当時=が逮捕された(その後不起訴)。病死とみられ、死後半月ほど経過。遺体には布団がかけられていた。男性は40年近くひきこもり、逮捕後の取り調べに筆談で応じるなど、会話ができない状態だった。

 

 40年近くひきこもりだった男性は、ベランダで草花や野菜を育てていた。部屋にはきれいな花が咲いていた=2019年12月、横浜市金沢区
 40年近くひきこもりだった男性は、ベランダで草花や野菜を育てていた。部屋にはきれいな花が咲いていた=2019年12月、横浜市金沢区

 

 「母は行政に相談していたんです」。自宅を訪れ遺体を発見した男性の妹は、取材に対し、無念さをあらわにした。


 男性は幼稚園から小学校にかけて、友達とは話をするものの、先生と全く話さず、教育相談で何らかの心理的要因により言葉を発せられなくなる「緘黙(かんもく)」と指摘された。小5から中学卒業まで不登校となり、家族との会話も徐々になくなった。


 13年に父が他界。妹も結婚して自宅を離れており、母と2人だけの生活に。部屋ではテレビやラジオをつけ、ベランダで草花や野菜を育てた。支柱を立てたり、ビニールを掛けたりするなど、きちょうめんな一面も。母に「(野菜を)収穫したら食べて」とメモで伝え、母が「一人だと寂しいから、居てくれるだけでありがたい」と手紙を書くと、自室のドアを開けていることが増えた。


 母は糖尿病を患っていたため、妹は「親亡き後」の男性の生活を案じ、横浜市のひきこもり地域支援センターに電話をかけた。だがそこは青少年相談センター(15~39歳が対象)も兼ねており、男性は40代だったため、保健所に相談するように言われたという。


 その後の経緯ははっきりしない。母は区役所のケースワーカーと相談し、15年から週1回の訪問看護を受けたほか、社会保険労務士に障害年金の受給手続きを頼んでいたようだが、いずれも途中でストップしていた。


 一家は自治会に加入せず、男性の存在や2人の暮らしぶりは周囲に知られていなかった。月に1度、電話で様子を確認していた妹は「母は生活が苦しかったと思う。年金と月に2、3千円のチラシ配りのバイト代だけだった」と明かす。


 母が亡くなったとみられる当日、男性が妹に電話をかけようとした形跡が残されていた。
 なぜ行政の支援は途絶えたのか。妹は真相を知りたいと考え、ケースワーカーとのやりとりなどを区に情報開示請求したが、母親の個人情報に当たるとの理由で拒否されたままだ。

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