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社会

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扉を開けて ルポ ひきこもり

仕事や学校に行かず、社会とのつながりを持たない「ひきこもり」。長期化 高年齢化が進む中、新たな生き方の模索や支援の現場をルポする。

8050問題と自治体(上) 「井戸端会議」で実情把握 試行錯誤、主体は住民

2020.7.18 18:51

 長期のひきこもり、親の介護、困窮…。さまざまな課題を抱える家庭の相談体制を強化する改正社会福祉法が2020年7月5日成立した。背景にあるのは80代の親と50代の子が孤立する「8050問題」の深刻化。一部自治体は既に独自に試行錯誤を重ねている。その一つ、北海道東部の津別町を訪ねた。

 

「身近な福祉相談所ぽっと」の担い手と話し合う社会福祉協議会の山田英孝事務局長(右端)=2019年8月、北海道津別町
「身近な福祉相談所ぽっと」の担い手と話し合う社会福祉協議会の山田英孝事務局長(右端)=2019年8月、北海道津別町

 

 「この間Aさんの家に行ったんだけど、息子は顔を出さなかった。大丈夫かな」。平日の午後、60~70代の男女8人が集会所でお茶をすすりながら話していた。よくある井戸端会議の風景。一つ違うのは、町役場や社会福祉協議会の担当者も参加する点だ。


 「身近な福祉相談所ぽっと」と呼ばれる集まりで、住民有志が担い手として2016年から毎月開催。カーテンが閉まったままの家など気がかりな情報を共有し、必要に応じ関係機関につなぐ。


 約4500人が暮らす津別町は「日本の近未来」に重なる。10年時点で65歳以上が37・4%を占め、高齢者数がピークとなる40年の全国の人口構成とほぼ同じだ。


 大阪市立大大学院の野村恭代准教授らの研究チームは町と連携し、15年に約500戸を訪問調査。2割の世帯が介護や見守りなど何らかの支援を必要とし、1割は要支援の「予備軍」だと分かった。15~64歳の2%に当たる50人超は長期的なひきこもり状態だった。


 小さな町では福祉専門家の数に限りがある。研究チームは住民と行政、専門職が協働する新たな仕組み作りを提案。困り事が深刻化する前の「予防的支援」を目指した。

 社協の山田英孝事務局長(66)は以前、毎日同じ時間に役場で求人票を見た後、静かに立ち去る30代の男性が気になっていた。支援を必要としているようだが方法が分からない。「話し掛けたら来なくなってしまうのでは」との葛藤もあった。


 男性は就職活動で挫折し、10年以上ひきこもりがちに。社協がプルタブの仕分けなどボランティア活動を提案し、幼い頃から男性を知る「ぽっと」の担い手らが「おはよう」「頑張っているね」と声を掛けると、少しずつ仕事や人付き合いに慣れ、やがて作業所で働き始めた。


 別のひきこもりの男性は、担い手の働き掛けで近所の雪かきを手伝うようになった。「就労がゴールではなく、大事なのは地域に居場所をつくること。ぽっとには行政では把握できない話がたくさんある」。山田事務局長は住民主体の取り組みに全幅の信頼を置く。


 目下の課題は若い世代の参加だ。担い手も高齢化し、いずれ「サポートされる側」に回る。他人との距離感が近すぎると抵抗を感じる人もいる中で、「少し目を配ったり、さりげなく声を掛けたり」といった活動をどう継続するかが肝になる。

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