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気の遠くなるほど続く被害 

2017.10.2 12:39
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キノコのかごを持つ親戚の女性。たくさん採れたが・・・
キノコのかごを持つ親戚の女性。たくさん採れたが・・・

 筆者の妻が最近、ベラルーシに里帰りした。ベラルーシと言っても大半の人にはなじみないだろうが、ポーランドとロシア、ウクライナに囲まれた人口約950万人の小国だ。旧ソ連を構成する共和国だったが1991年に独立。住民は大半がロシアと同じスラブ系のベラルーシ人だ。

 秋のベラルーシの楽しみはキノコ狩り。筆者も妻、義母と共にキノコ狩りをした経験があるが、広大な森林の中を新鮮な空気を吸い込み、キノコを求めて歩き回るのは楽しく、うきうきする。(その森の様子は、第2次大戦中のベラルーシでのユダヤ人パルチザンの闘いをテーマにした2008年の映画「ディファイアンス」で詳しく描かれている)。また「バラビク」と呼ばれるこのキノコがおいしく、ソースと一緒に煮てもいいし、乾燥させた後にスープに入れて香りを楽しむこともできる。調べると、イタリアの有名な高級キノコ、ポルチーニと同じ種類でヤマドリタケに属するという。

 今年は9月の気温が高かった上に雨が多く、キノコの生育に最適な気候だったことから10年来の豊作で、妻は義母や親類と共にキノコ狩りに精を出し、計1000本も集めた。家のペチカ(暖炉)で乾燥させ、一部を持って帰るというので、あの香りをまた楽しめると筆者も心待ちにしていた。ところが妻が電話してきて「キノコは持ち帰れない」と言う。聞いてみると、基準を大幅に超える放射性物質が見つかり食用にできないというではないか。

 1986年のチェルノブイリ原発事故で、ベラルーシは甚大な被害を受けた。事故そのものは南に国境を接するウクライナ北部のチェルノブイリで起きたが、風向きが悪く、風と雲により大量の放射性物質がベラルーシに運ばれ降下した。(この点に関しては、放射能雲がさらに北上し、モスクワなどロシア欧州中央部の大都市に到達することを恐れた旧ソ連当局が、ベラルーシ上空で人工降雨させたとの説があり、多くのベラルーシ人が今もこれを信じている)

 妻の実家のある東部モギリョフ州はゴメリ州と並んで最も被害の大きかった地域の一つだ。念のため集めたキノコを国立の検査機関に持ち込んで主要な汚染物質であるセシウム137を測ってもらったところ、基準の12倍もの放射性物質が見つかった。せっかくの苦労が水の泡。妻には「すぐ全部捨てるよう」申し渡した。(以前は検査もせずに、むしゃむしゃ食べていたことを思い出し、怖くなったが後の祭り)

 同国の国立森林保護監視機関によると、今年7、8月に採取されたキノコを調べたところ、ゴメリ州で45%、モギリョフ州で25%のキノコが基準値を超えていた。最も高い放射線量を検知したのは同州のチェリコフスキー地区だった。ベラルーシ全体では北部ビチェプスク州を除いた全ての州で基準値超えのキノコが見つかり、1年を通じての統計では全体で37%が食用に適さなかった。

 事故から31年たったが、なお深刻な汚染が続いていることを垣間見せられた。セシウム137の半減期は約30年で徐々にではあるが状況は改善しているというが、なお道は遠い。ベラルーシの一部専門家は長期間の被ばくを考えると、そもそも基準値が甘すぎるとも批判しているが、基準を厳しくすればそれこそ、大半のキノコ、牛乳などが食用に適さなくなってしまうだろう。いったん事故が起きれば、気の遠くなるような期間、その結果と向き合わなくてはならない―。原子力とはそういうものなのだ。 (47NEWS編集部 太田清)

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