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第1部「能力至上社会を生きる」(6)子どもの感性、金銭次第?  「超業績主義」時代に突入(教育の現場から③)

2018.7.9 12:06
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 子どもたちが笑顔で行き交う廊下の壁には、プロの画家が描いた何枚もの絵が飾られている。淡い色彩の静物画、鮮烈な色合いの抽象画―。相模原市にあるLCA国際小学校の校舎は、さながら小さな美術館のようだ。

 6年の桜田麗実菜(さくらだ・れみな)(12)は休み時間、花瓶に挿した花の絵の前で足を止めた。花の輪郭が角張っており、中には渦巻きが描かれている。色にも統一感がない。現実の花とは似ても似つかないのに、不思議な美しさを感じる。絵にはそれぞれ個性があり、画家の見た世界が凝縮されているよう。

LCA国際小学校の校舎内に飾られた絵画を見る桜田麗実菜(右)ら=相模原市
LCA国際小学校の校舎内に飾られた絵画を見る桜田麗実菜(右)ら=相模原市

 「もしも他の人や動物だったなら、景色はどう見えるのだろうか。そんな想像をしてしまう」。常識にとらわれることのない発見を、画家たちの絵は日々与えてくれる。

 授業で4年生を指導した画家の大和田(おおわだ)いずみ(46)は「同世代の子どもはうまく見せようとお手本を探しがちだが、ここでは似ている作品がない。自分の表現したいものがあり、ストレートにぶつけている」と子どもたちの感受性に驚く。

 この小学校は、英語教育や中学受験対策に加えて芸術教育にも力を入れる。人工知能(AI)が急速に発達し、人間から仕事を奪うとされる「第4次産業革命」が進展する現代では、新しい価値を生み出す創造力が鍵になるとみているためだ。

 基礎学力や知識量といったペーパーテストで測定できる能力の高さが、学歴や雇用に結びついていた戦後の日本。しかし、定型的な製品を速く正確に大量生産できればよい時代は終わった。

 受験学力を身につけ、努力さえすれば対処可能だった「業績主義」の時代とは異なり、現代は多元化した能力が求められる「超業績主義」に突入したと指摘するのは、東大教授(教育社会学)の本田由紀(ほんだ・ゆき)(53)。「昭和と違って、東大生も勉強しかできない人は評価されなくなった。付加価値として求められる創造性やコミュニケーション力といった力は、性格や人格と切り離すことができず、勉強では身につきにくい」と話す。

 芸術教育のような特別な環境が用意されるのは、富裕層に限られる。コミュニケーション力は、両親らとの日常会話の量や質にも左右されると言われる。こうした能力の習得に大きな役割を果たすのは家庭環境で、さらなる階層化を引き起こすのではないかと懸念されている。

LCA国際小学校の校舎内に飾られた絵画の前で談笑する桜田麗実菜(左)ら=相模原市
LCA国際小学校の校舎内に飾られた絵画の前で談笑する桜田麗実菜(左)ら=相模原市

 2008(平成20)年に株式会社立で開校したLCA国際小学校の入学金は100万円。年間の授業料や教材費などは150万円近くに及ぶ。在籍する児童はおのずと、医師や経営者らの子が多くなる。

 LCA国際小学校の運営法人学園長、山口紀生(やまぐち・のりお)(65)は、格差が次世代に引き継がれる可能性を認めつつ「自らの感性を頼りに未来を切り開く若者を育てるには金銭的な後ろ盾が必要だ。リーダーとなった子どもたちが、世の中を良い方向に変えていってほしい」と期待を込める。(敬称略)

 第4次産業革命 2010(平成22)年代以降、最新の情報通信技術や人工知能などを核として、生産効率を飛躍的に高めようという世界的な技術革新の動き。蒸気機関の発明による第1次産業革命などに続く変革期と位置づけられる。

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