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私たちの平成

バブル末期に始まった平成は、残り1年あまりで幕を閉じます。 効率性や生産性の高さが個人の評価を決め、「自立した強い個人」が求められた時代。 能力を至上とする価値観は私たちの生き方をどう変化させたのでしょうか。

⑤「統率力」も測定可能に  模範解答はビジネスマン(教育の現場から2)

2018.7.9 12:05
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 カフェの店番のシフトに突然穴があいた。「誰かがやらなきゃいけないんでしょ。だったら私がやるよ」。産業能率大(東京都世田谷区)3年の川島萌(かわしま・もえ)(21)がいつものようにさらりと言った。
 川島のゼミは、学内でカフェを運営する実践型プロジェクトに取り組む。シフトに入るはずの同級生の都合が悪くなると、川島は嫌な顔一つせず引き受けた。同じゼミの西牧友香(にしまき・ゆか)(21)は「私もしっかりしなきゃ」と気を引き締める。
 西牧や川島らは2017(平成29)年、学校で「社会に出て活躍するのに役立つ力」を測定できるというマーク式テスト「PROG(プログ)」を受検した。7段階で表される9項目の能力のうち、西牧は「統率力」「感情制御力」「自信創出力」が低く、川島は「統率力」「感情制御力」「計画立案力」が非常に高かった。
 西牧は自分から意見を言うことはほとんどない引っ込み思案な性格だが、「潜在能力は高い」と周囲から推され、今回はプロジェクトのリーダーを引き受けた。普段はゼミのまとめ役の川島は、さりげなくサポートに回ってくれる。西牧は「人間的にすごくて、とてもかなわない。就職してからも頼りにされるんだろうな」とうらやむ。

接客をする川島萌(左)と、その様子を見守る西牧友香=2017年12月、東京都世田谷区の産業能率大
接客をする川島萌(左)と、その様子を見守る西牧友香=2017年12月、東京都世田谷区の産業能率大


 昭和から続く激しい受験競争は、学力だけで人を選別しているとの批判を浴びた。平成に入ると、人間性などを評価するAO入試の取り組みも広がったが、能力の判定基準が曖昧で、客観性に乏しいとの指摘もある。
 その点、数値で結果が出るPROGは極めて明解だ。授業の前後でPROGの数値がどう変化するかを調べるため、2年前に導入した大同大(名古屋市)の大学事務部長児玉鉄男(こだま・てつお)(63)は「測定することはすべての基本。結果を教育内容の改善につなげ、学生の力を伸ばすことで就職実績を高めたい」と力を込める。
 PROGは大手予備校の河合塾と、リクルートから独立し、キャリア教育を支援するリアセック社が共同で開発した。仕事ができる若手ビジネスマン4千人超の回答傾向に近いほど、能力が高いと判定される仕組みだ。
 ①感情に流されず、客観的な状況を分析して判断を下す②客観的な情報よりも人の気持ちや人間関係に配慮して判断を下す―。そんな二つの選択肢から、普段の行動や自分の考えに近い方を選ぶ。この問題の“正解”は、前者になるのだという。
 こうして測られる力は能力なのか、それとも性格的な傾向なのか―。数値化の魔力はそんな素朴な疑問も吹き飛ばす。12(平成24)年にスタートしたPROGは、年間300大学の15万人が受検するまでに拡大した。
 学歴信仰へのアンチテーゼを提示したかったというリアセック代表取締役の松村直樹(まつむら・なおき)(55)は「人を評価する物差しは、たくさんあった方がいい」と強調する。遠からず「人間力ランキング」も実現しそうな指標の登場は、私たちをどこへ導くのだろうか。(敬称略)

 AO入試 学力重視の従来型入試に対し、書類審査や面接などを通して、受験生の能力や適性を総合的に評価する選抜方法。日本では1990(平成2)年度の慶応大が先駆けで、2017(平成29)年度は計554大学が実施した。

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