メニュー 閉じる

47NEWS

社会

社会

子どものいま未来

いじめ、不登校、虐待や貧困。子どもたちをめぐり山積する課題に、教育や福祉の最前線で取り組む専門家・支援組織の活動を追う

(11)起点はプレーパーク  貧困、孤食の子につながる 人に向き合うことこそ

2017.12.26 23:22
Share on Google+ このエントリーをはてなブックマークに追加
池袋本町プレーパークで子どもと遊ぶ栗林知絵子さん
池袋本町プレーパークで子どもと遊ぶ栗林知絵子さん

 子どもの冒険遊び場(プレーパーク)、無料の学習支援、孤食の子らに食事を提供する子ども食堂…。東京・池袋で困難を抱える子どもと親を支える活動を続ける 栗林知絵子(くりばやし・ちえこ)さんは「おせっかいおばさん」を自称する。「私は福祉には全く縁がなかった。困っている人をほっとけなかっただけです」と話すが、周囲にはつながりが生まれ、悩み苦しんでいた人たちに笑顔が広がる。

 無理じゃない

 原点は豊島区池袋本町のプレーパーク。「子どもが自然の素材を使って自分のやってみたいことを実現する遊び場です」。2人の男の子の母親として13年前から関わってきたが「その中で見えてきたのが子どもたちの現実でした」。食事をしていない子、引っ越して来るまで家族で車の中で過ごしてきた子もいた。

 4年前、転機が訪れる。プレーパークに来た中3の男の子が「高校に進学できないかも」とつぶやいた。聞くと「先生に無理って言われた」と話す。「無理じゃないよ。勉強教えてあげるよ」。自宅の場所を知らせて別れると、5分後、彼が玄関に立っていた。

 勉強のつまずきは小学校段階。家庭環境も厳しかった。母子家庭で母親はダブルワーク、1日500円もらって食事はコンビニ弁当ばかりだった。「うちでご飯食べたらどう?」と誘うと「家族でご飯食べるの? キモッ!」と応える。栗林さんと2人で食べることから始め、半年後、みんなで食べられるようになった。

 東京都には受験準備の塾代20万円を助成する制度がある。だが不合格なら返済しなければならない。保証人になった栗林さんが、返済に備えて地域のサポーターを募ると、1カ月間で約100人、12万円が集まった。

 おせっかえる

 彼は2次募集で都立高に合格。返済不要になったお金と、応援してくれた人のつながりを生かし、2012年にNPO「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」を設立した。そこから「要町(かなめちょう)あさやけ子ども食堂」が生まれる。理事の自宅で開く月2回の食堂だ。近所の主婦らが調理、多いときは50人以上が夕食を共にし、遊んでいく。 

子ども食堂の栗林さん
「要町あさやけ子ども食堂」のだんらん。左端が栗林さん

 母子家庭であることをからかわれ、小2で不登校になった少女と母親はここで救われた。孤立し、精神的にも経済的にも追いつめられた母子を栗林さんが食堂に誘い、多くの人と触れあうようになった。

 WAKUWAKUネットのシンボルになっているカエルの絵はこの少女が描いた。「おたまじゃくしのとき、いっぱいおせっかいを受けたカエルは『おせっかえる』となって街の子どもたちにおせっかいをして助ける」という意味だ。

 「食堂に誘って来なかったら迎えに行く。断られても、また次のとき誘う。立ち入りすぎのように見えるかもしれないけれど、あなたたちのこと、忘れていないからねというメッセージだと思っています」

 

不登校の母子と食事会 自分取り戻すきっかけに 

 きっかけは長男だった。栗林知絵子さんの長男が通う高校で、クラスの女子生徒の1人が急に学校に来なくなった。先生は病気と説明したが、栗林さんの「おせっかい」に似たのか、長男は担任に「どこの病院なんですか。お見舞いに行きたいから病院を教えて」と繰り返し頼んだ。

 何度も聞かれるので、担任が女子生徒の母親に相談、母親から栗林さんにメールが来る。

 実は突然、おなかが痛いと言いだして、学校に行けなくなった。いま、学校をやめようかと悩んでいる。そんな内容だった。

 後で分かったことだが、父親は一流企業で働き、女子生徒の兄の受験では難関大以外は認めないと言い渡していた。そして、女子生徒が学校へ行けなくなったのは、弟が有名私立大の付属高に合格したと分かった日の翌日からだった。

 栗林さんの知人には、不登校の子を持つ親が他にもいた。そこで2組の母子に呼び掛け、自分の長男も含めた親子の食事会を企画する。4家族8人、初めての食事会は和やかに楽しく終わった。

 その後、母親たちからメールが届く。「あの子が笑っていた」「あんなに楽しそうにしているのを久しぶりに見た」

 一品持ち寄りの食事会は毎月の定例になった。そして挫折感にさいなまれていた子たちが、自分を取り戻していった。

 今、池袋本町公園のあずまやにかかる横断幕「池袋本町プレーパーク」の伸び伸びとした文字と絵は女子生徒が描いたものだ。

 

「記者ノート」分からないことに寄り添う

 栗林知絵子さんが学習支援をした中3の少年は授業ノートを一生懸命とっていた。ノートをとっていれば分かるようになると思っていたからだ。彼が「分かっていないこと」に

「要町あさやけ子ども食堂」の台所。20人以上で食事の準備をする
「要町あさやけ子ども食堂」の台所。20人以上で食事の準備をする

誰も寄り添っていなかったのだ。

 高校に入ると彼は「勉強が楽しい」と言いだした。通知表には「5」がいっぱい。つまずきをやり直せる高校で、英語はアルファベットの書き方から。「ちゃんと学べば勉強は楽しくなる。学校ができない、親ができないなら地域でやりたい」と栗林さんは話す。

(文と写真、共同通信編集委員・佐々木央)=2015年11月取材

最新記事

関連記事 一覧へ